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年券の案内が届いた

相変わらず釣りには出ておりません。。。最近PCゲームで休日がつぶれておりましてね。

ところで、2月ということでいよいよ長良川など一部の河川が解禁となり、さっそく多治見の「たっくれっと」のご主人はSNSにスプーンでシラメを見事ヒットさせているのを紹介していた。そして益田川解禁の案内はがきも届いていた。実は2017年は渓流には一度もいかなかった。2016年は3回くらい行って川で転倒したことでモチベーションが下がり、それ以来行っていないのに、はがきが来た。再開する可能性は無きにしも非ずだが。「この辺に親戚でもいるのか」と監視員のおっちゃんに訊かれるくらい通いこんだ頃もあったけど。

実は筆者、もともと管理釣り場でトラウトのルアーフィッシングに入ったクチで、ルアーで釣り切れないのにフライの人は良く釣っているから見よう見真似でフライをはじめ、やがてフライを自作するためのマテリアルを求めて「たっくれっと」に入り浸るようになったのである。で、たっくれっとのご主人に「渓流で釣ればいいじゃん」と勧められたのがきっかけで渓流デビューしたのだ。

「渓流って難しいんでしょ?」「いやいや、春先でも放流したアマゴがいるから放流ポイントの近くでやればとりあえず釣れると思うから行ってごらん」「やってみようかな」

そうして、筆者は初めて益田川水系へ出かけるのだった。

飛騨小坂は風光明媚で釣りと温泉が楽しめるいい感じのところ

益田川というとアユ釣りがもっぱら有名だが、ルアーフィッシングには程よく水量があり竿抜けも残っている最高の川でもあり、特に桜が咲くころから梅雨明けごろまでが面白い。初めて支流の小坂川に入ったのは例年より春が遅いね、と話していた年の4月頭。まだ現地は桜が咲いておらず、まだ冬の残り香が漂うような雰囲気だった。

そのころ筆者は会社を辞めた原因である鬱からの回復期で、週に1度くらいの講師業を始めて、ぼちぼちウェブデザインを学んだりして半分ニートに片足を突っ込んだような、のんびりとしつつもうつうつとした日々を過ごしていた。鬱で一部記憶がなくなるほどにエネルギーを失い、社会との接点が乏しい状態が続いていると、自分にどうしても自信が持てなかった。たまに管理釣り場に行ってはそこそこ釣っていたが、渓流というのはもっと高尚で難しいものだという風に思っていた。釣りの本などを見ても、渓流魚は警戒心が強く繊細なアプローチが必要だ、などと書かれていたからだ。

早春の小坂川に立つ

その日、同じく気分転換しようという母と二人、飛騨小坂の道の駅でカレーなんぞを食べ、母は風景のスケッチを、筆者はその目の前の川で釣りをした。いわゆる放流ポイントのひとつで、周辺には民家もあるような里川だ。

その日はたっぷり作ってきたフライの中からいびつでへたくそなエルクヘアカディス#14にフロータントをまぶしてはロッドを振った。今思えば、ろくにカワゲラなどもハッチしないような時期によくもまあ選んだものだ。時折、魚影がフライにアタックしようと浮いてくるのが見える。しかし、ラインメンディングも下手なのでなかなか飛び出してこない。

何度か立ち位置を変えながら流してやると、20センチほどの銀毛アマゴがフライにヒット。放流魚ではあるが、まぎれもなく自然河川で釣った初めての渓流魚である。そうやって初めて釣れたことがうれしくて、もう25歳くらいのいい大人なのに駆け足で母に釣れたことを報告しに行った。中学校が嫌になって引きこもった冬に近所の川で鯉を釣ろうと真冬にもかかわらず通いこんだ頃と記憶がふとオーバーラップした。

それからはもうアマゴたちはフライに見向きもしなかった。今思えば、もっといろんなポイントを歩いて回るべきだったのだが、まだそんな知識もなかったし、満足して帰路についた。

誰にでも、一生忘れない魚というのはあるのではないかと思う

それから何度も川に出かけては、思うように釣れず、本を買いあさったり、釣具店でアドバイスを求めたりいろいろやった。フライはもうやめてしまったが、自作の逆引きフライで40センチくらいの脱走ニジマスが足元の岩陰から飛び出してきたこと、夏の夕暮れに#10と大きく作ったエルクヘアてんこ盛りフラッタリング用のドライにゴボンという音とともに飛び出してきた尺イワナ、胡散臭いニンフを丸呑みしたピカピカのオレンジドットが美しいアマゴ、どれもいい思い出になった。

やがてものぐさ度が増して「気楽で大物も狙いやすいから」ルアーロッドに持ち替えてしまったが、それでもいろいろと楽しい経験をした。

釣りをする人と話をするたびに、筆者は

「ルアーやってんなら渓流行きなよ。楽しいよ」

と話している。するとたいていは

「でも難しいんでしょ?」

とリアクションする。

「大丈夫。時期がよければちゃんと釣れるから」

そのくだりのたびに、あのアマゴを釣った日を思い出す。

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