サイトアイコン P-squad Magazine(旧ドブログ

浜名湖ダンゴ師デビュー

1994年10月。当時下手ながら海釣りにはまっていた親子で月に一度くらいのペースで浜名湖海釣り公園に出かけた。その日も雨風で波風立つ海だった。

いつものように、コッパグレやらヒイラギやらと戯れていたが、あまり釣れず堤防の内向きに目をやれば、じっと座ったままのおっさんがチヌやらサンバソウやらビシバシかけている。親子でその様子をただ見ていた。

父はきっとダンゴ釣りならチヌが釣れるんだろうとダイワのヘチ竿を筆者と自分の分とそれぞれ一本ずつ買った。見よう見まねでトライするが、そもそも釣りの原理を理解していない初心者には全く無謀な話で、餌代も高いからと結局すぐにやめてしまった。竿はワカサギのボート釣りとかカサゴ釣りに転用されたがその短さゆえ大した出番もなく物置で眠ることになる。

思い出の浜名湖海釣り公園に我が手の運転で再び参上

このブログでも以前書いたが、浜名湖海釣り公園は筆者にとって海釣りの思い出がたくさんある原風景の場である。

時は流れて2018年梅雨曇りの早朝、サビキのサバ狙いで賑わうこの場に35歳になった最近仕事も充実してイケイケの私は上げ潮を待ちながらその内向きのポジションに陣取りスマホの将棋をやりながら潮時を待った。将棋は格下相手に角道のコントロールを忘れ美濃囲いの脇をうっかり差し込まれる凡ミスで負けた。バカか俺は。気が散りやすい時にやるもんじゃない。

たくさんの家族連れがきていて、ちょうどあの頃の自分のような男の子もちらほらいる。今度は俺が堤防のヒーローになるんや!

単品オッケーとうたったマルキューのダンゴ餌を表記通りに作る。相変わらずパッサパサでジャリっとしていてまとまりにくいが、こういうものなのだろうか。セットガンよりジャリジャリじゃん(ヘラブナ用バラケ。めっちゃジャリっとして散らばるのでまとまりにくくコントロールしにくいけど使いこなせたら棚が上ずりにくく釣りやすい)。

と、隣にベテランダンゴ師が入釣。まさに、25年前に見たあの感じだ。話しかけて、あわよくば釣っているところを見たい。

勇気を出して話しかけてみたところ、大変気さくな方で、釣り師たるものかくありたいと思った次第。というか、もう釣れるオーラめっちゃ出てる。伊達にいろんな釣りを経験していないから、この人は釣る人だな、あるいは釣れない人だなというのは、少し話したらなんかわかるのである。

下げ潮がやや落ち着いてきたかというタイミングで劇場が始まった

まだ流れるので、一般的なダンゴ釣りとは異なるがどうしても重いオモリが必要だ。筆者はガン玉5Bを三つつけてごまかそうとしたが、どうやら中通し3号がちょうどよかったようだ。気配を感じて横を向くと、尺はあろうかというグレがベテラン氏の玉網に収まるところだった。

YouTubeでは見ていたが、やはりこのサイズのグレを間近で見ると迫力がある。本当にこんな人だらけの釣り場にこんなやつがいるんだ!と感嘆する暇もなく、竿がどんどん絞られ、堤防サイズと呼ばれるサイズをずっと超えた立派な魚体がスカリに吸い込まれていく。

 

一方こちらはうんともすんとも言わないのである。

凄いですね!と言えば、いやー運だよーと返ってくるが、それが運のようないい加減なものではなくセッティングや腕によるものだということは間違いないと確信して、じっと観察する。普段ヘラブナ釣りをしている感覚からすると、もう完全にノウハウの差だということははっきりわかる。まず車の中を探ってどっかにやった中通しオモリを取り出して仕掛けを中通しにする。

でも釣れない。

神は隣人。隣人は神。汝、隣人を愛せよ

風も7メートルほど吹いておりファミリー客はどんどん帰っていく。

潮が緩むと一休みになったが、上げ潮に入るとまた釣れ始める。グレが何枚も寄っていることは間違いないのだ。なのに自分だけ釣れない。

見かねた隣人改めダンゴの神様はこちらのダンゴのタッチを確認するや、これは良くないよ、底までもたなくて寄せきれてないよ、とご持参の糠を分けてくれた。すると、すんごくしっとりしたタッチになり、握るとスッと圧縮されていき良くまとまるようになった。

おいマルキュー!単品オッケーってなんやねん!

つまり今までせっせと4時間くらい棚ボケする釣りを延々やっていたのだった。

そして、穂先に出る揺れは実は風ではなくあたりだった!

「今の全部あたりだよ。この動きは風と関係ないからとにかく合わせてみよう」

確かに、時折ソリッド穂先は細かく震えていた。これがあたりだとは思えないくらい風も強かったが、言われた通り合わせてみると、強すぎてハリスがあわせ切れ。これでいいのか!

昔の自分ならこの一瞬の失敗が致命的だと落胆するところだが、配合餌で寄せる釣りを経験してきた経験から、なーに慌てずとも何枚も寄ってるはずだしまた当たるさとハリスを結び直す。

微妙な違和感を拾ってようやくヒット。やったー!!!と狂喜乱舞。5時間粘った甲斐があったし、教わらないと絶対に釣れなかった。

ただし、胸元のスレだった。ヘラだったらノーカウントである。今度は食わせたい。

その次は明確に穂先がツッと押さえ込まれるあたりをとったが、PEなのに強引にやりすぎてクッションが効かずハリス切れ。なーにまだry

そして餌も残りわずかのタイミングで、ラストの一枚はどんなあたりかを思い出せないくらい、気がついたら合わせていた。一気に走るスピードは尺半のヘラに似ているがそれよりもっと鋭角的というか、暴力的なエネルギーがある。

今度は慎重に、短竿のPEにフロロだぞ、全くクッションないぞ、と自分に言い聞かせながらやりとりするが、底に張り付いたんじゃないかと思うような重量感。足元突っ込まれたらバレるぞ!と神からも檄がとぶ。

なんとかボタから引き剥がし玉網に収まったのは29.5センチ!おしい!

2ヒット2バラシとなったが、ノウハウを学ばせてもらえて実際に結果も出て、最高の1日になった。今度はもっと良く釣れるはず。

感慨深い一日!

かかり釣り風ダンゴ釣りで底についたグレ狙いというのは、少し珍しいスタイルかもしれないが、浜名湖独特の釣法として研究しがいがありそうだ。

お隣の神様とはどうやら色々共通項があるようで、連絡先を交換させていただき、その後夕方のキビレおじさんこと相棒と合流するためお礼を伝えて解散、撤収した。

なお夕方の奥浜名湖二次会はチビカサゴ数匹をリリース、爆風8メートル級の向かい風でチヌ針5号に

こんなハゼのあたりを見逃さないという離れ業をかまして納竿となった。

ちなみに今回使った竿は、94年に買ってもらった例のヘチ竿である。思い出の場所で、当時叶えられなかった夢を叶えた満足感と出会いとそれを楽しそうに聞いてくれる釣友に感謝しながら帰路についたが、家の駐車場で力尽き自宅なのに車中泊というだらしないオチがついてしまったのだった。

モバイルバージョンを終了