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チョーチンウドンセットは邪道なのか

すみません、否定する気はサラサラないのですが、敢えて近づかない釣法でした。一昨年までは。

へらぶな釣りを再開したころ、チョーチンウドンセットにおけるタテ誘いがヘラブナ釣りの競技としてありかなしかみたいな話題をきいて、ああ、俺の知っている釣り方と違う釣り方があるんだなあ、位にしか思っていなかったが、レッドマン氏によると「真冬のひだ池ではぜひとも採用したい釣り方の一つ」。

そんなわけで、2020年の冬から翌年春先にかけて、イチから教わりました。レッドマン式チョーチンウドンセット。その釣法で、氏は22年2月のクリエイトひだ池例会で見事優勝しているのだから、その説得力は折り紙つきというものである。

今回はこの釣り方について私見を述べたいと思う。

へら専科「みんなの釣行記」に掲載された一枚。チョーチンウドンセットをやり始めてようやく釣果が出てきた頃。

どんな釣り?

チョーチンウドンセットは年中浮き桟橋を中心とした釣り場で行われている釣り方で、穂先から近いところにセットしたウキが特徴だ。竿の長さいっぱいの深さで釣るので、細かな誘いが効かせやすい。ウドンセットということで、食わせエサには固形エサを使う。暖季はバラケエサをもたせ気味にして短いハリスで強いアタリを引き出し、寒期はなかなか餌を食わないヘラブナをどうにかして食わせるための手段の一つとして、極限まで細く長いハリスとごくごく細いムクトップのウキを用いて微細なアタリを引き出す。

いずれも一般的に食い渋りに強く、地合いが安定しやすいと言われている。

物議を醸す理由:タテ誘い

そのチョーチンウドンセット、食わせが沈下する僅かな間で食わせたり、バラケを揺すって脱落させたり、理由はいくつかあるがその特性故にタテ誘いが有効である。穂先とウキが近いので、仕掛けの位置を横方向にブレさせることなく何度でも縦に小刻みな誘いをかけられるのである。これが物議を醸しやすい材料となる。

というのも、何度も執拗に誘って当たらせる釣り方は本来のヘラブナ釣りらしくない、という意見だったり、夏場のいわゆるホタチョーのように穂先まで衝撃が伝わるようなアタリを誘発するような釣り方はウキでアタリをとるヘラブナ釣りの趣旨に反する、という意見である。私は出場しない、できない、オフィシャルな大会でも厳密な規定が追加されたりする部分である。具体的な内容は責任が取れないのでここでは記載しない。

「誘い」自体はありふれたテクニックである

ウキでアタリをとるのがゲームとしてあるべき姿ですよね、という意見はそうだね、と思うのだが、誘い自体は浅ダナセットでも、底釣りでも、一般的なテクニックだ。いわゆる誘いがそれぞれの釣法においてどのような効果を引き出しているのかの各論はここでは触れないが、少なくともチョーチンウドンセットにおいてはこの誘い、というアクションがアタリを引き出す直前の一手として有効であることは間違いないだろう。

もちろん、誘いを嫌ってか、不要論者なのかはまちまちにせよ、誘いをかけない人もいる。

で、私はどうかというと、両方だ。執拗に誘うときもあれば、誘わないときもある。まず、前提として誘わなくても釣れるに越したことはない。普通にぶら下がったクワセを食ってくれないから、仕方なく誘うのである。今のところは。

チョーチンウドンセットにおける誘いの効果

22年2月時点での自分の解釈だが、チョーチンウドンセットにおいての誘い、というのは、ぶら下がる食わせのテンションを抜くことによって一瞬不自然に持ち上がった後自然落下状態になる食わせについ反応してしまう、あるいは大きめの誘いであれば自然落下中のものなら違和感を持たずに食いに来る、という状況の演出ではないかと考えている。前者は食わせが落ちきる直前、後者の場合は落下中にウキが戻っていく中ウキが突如加速する、みたいなアタリが出る。一方で一切誘わないほうが釣れることもある。

なかなかアタリが出ない中で、どうすればウキが動くかを試行錯誤するのである。

夏場はともかく、真冬の非常に厳しい状況下において、この誘いというアクションはとても効果的なのだという。

食わない魚をどうにか食わせたいのは釣り師の本能である

なかなか釣れない活性の低い魚をどうにかして釣り上げたい。これは冬の釣り師の本能と言っていいのではないか。エキスパートたちは段底やチョーチンウドンセットの釣法を確立した。我々はその恩恵に預かり、生命感が乏しくなった冬でも釣果が見込めるのである。

ゲームとしてのへらぶな釣りはあくまでもウキ釣りで、リールのない竿で、二本鈎で、その他諸々の基本ルールのもと楽しむからこその面白さがあることに異論はないが、よりよく釣るために、そのルールや趣旨が及ぶ範囲を解釈し、その中で試行錯誤、工夫していくことで新しい釣法、新しい技術が生まれるのは当たり前の話である。いま一般的なヘラブナ釣りのスタイルだって、調べてみると実はそこまで古くない。時代が変わるにつれて、環境も、釣り方も、ルールも微妙に移ろってきたのだ。競技としてルール規定を破ってはならないが、そのルールの範囲内なら釣り方は色々あってこそ工夫しがいがあって面白いし、それぞれの釣り方の面白さが増えるということは単純にヘラブナ釣りの奥深さと魅力を増やすことにつながる。

ダイワ へらX(Y)。万能ではあるが、特にチョーチン釣りに最適化されたロッドだ。微妙な操作をしやすい。

特に冬の釣りはかかり釣りの駆け引きに近いものがある

最近サボっているがチヌのかかり釣りで穂先の微妙な変化から水中の様子を読み取り、ここというタイミングであわせるあの駆け引き感と、チョーチンウドンセットの駆け引き感はとても似ている。

冬のチョーチンウドンセット釣りでは、バラケが抜けてからのウキに出る微妙な動きがあるかないかで、周囲に魚がいるかどうかを読み取る。それも、狙ったゾーンに近いか、食い気がありそうかどうかも、推測する。その為非常に繊細なウキを使う。バラケが抜けてからタテ誘いでわずかに持ち上がったウキがまた沈んでいく中、戻りが僅かに遅いとか、早い、不安定というのを確認できるまで、粘りの釣りである。

そこにヘラブナがいて、バラケに反応している、ということがわかったら、粘る一手に意味が生まれる。ほとんど沈下したバラケの中でも残りカスみたいなのが漂っていれば、チャンスは残る。だからタテ誘いをする。おそらくそこにいる、一枚か二枚の僅かな、貴重な貴重な、食い気のあるヘラブナをその気にさせる駆け引きである。

その見えない水中の駆け引きが面白いのが、この釣り方だ。

いるのは間違いないけど食わない。それをどうやって?僅かなチャンスを逃さない。ツッと小さなアタリを見逃さない。しびれる一枚が寒さを忘れさせてくれる。こんな釣りは、年明け~2月末までくらいの厳寒期を乗り切る一手であり、楽しみである。

やる前は敬遠していた私がこんなにおもしろいと感じるのだ。去年に引き続き、今年の冬ももっぱら管理釣り場の釣りはチョーチンウドンセットで通した。段底も気になるし、両グルテンの底釣りも捨てがたいが、後悔はしていない。

ちょっとさみしくなった残業タイム

ひだ池での例会の後、残業と称してチョーチンウドンセットの釣りを続けていたのだが、厳寒期仕様のタックルでは全然釣れなくなった。しばらく粘ってみるもカラツンばかりで釣れないので、ハリをワンランク重いものに交換し、ハリスを10センチ詰めたら釣れた。それからは続けて強いアタリが出るように。例会客のほとんどすべてが帰宅した後、クリエイトの変態数名が残って遊んでいたのだが、そうなると本来のヘラブナなりの活性に戻る。また、夕マヅメであることもあって、活性は上がっていく。

あがりベラは竿ツンで強烈なヒットだったが、春の訪れを感じる嬉しさとともに、ほんの少しの寂しさを感じた。

ウキを一瞬で水中に引き込んだ。春はすぐそこだ。

そう心配しなくても、3月いっぱい、下手すると4月でも混雑や例会ではシビアなセッティングが求められるだろうw

しかし、寒い寒いと泣き言を言いつつ数ミリの鋭い微細なアタリを引き出してモノにした日の帰りのドライブの心地よさ、立ち寄るスパ銭のサウナの気持ちよさは格別である。無事、冬を越せた、という喜びと同居する惜別の念は、また来年の冬の厳しい冷え込みに対する恨み言で上書きされていく。

その魅力は食わず嫌いにするには少々もったいない。

さて、水がぬるんできたら、次は強烈で豪快なチョーチンウドンセットのシーズンだ。今年はチョーチンを念頭に設計されたヘラXを増やしたし、プライベート釣行でもどんどん味わっていきたい。

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