何かとお世話になっている木村通信氏とようやくかかり釣りに行く算段が整ったのだが、問題は場所だ。
初心者を連れて行くなら、やっぱりアタリが多いところがいい。清水か、三重か…と迷っていたが、ここにきて何故か若狭本郷はやし渡船が好調だという。春は大物の乗っ込み狙いというイメージがあったが、どうも数釣りモードらしく、出ている日は50枚を超えるのだとか。
そういうことなら、たまには行ってみるか、ということで出かけてきた。
渓流丸一日ガイドから中一日の晩に集合
自宅にて集合して乗り合いすることになっていたが、渓流ガイドツアーから26時間後に出発である。準備や合間の仕事等を考慮するとなかなかきついものがあるが、自分で決めたスケジュールなので仕方がない。
ちなみに木村通信氏は船遊びしてから仮眠もとれずに来たと言うので、車中で寝てもらおうと思ったが結局喋り倒しているうちに現地についてしまった。お互いどうかしている。
オーソドックスないつもの準備
オキアミ、コーン、さなぎ、エビ、ボケを用意した。今回は初心者対応ということであまり餌にお金をかけすぎないようにしたが、どうやらケチったものの有効な餌はボケだったようだ。
船着き場にて荷物の準備を終えてウロウロしていると、なんかどっかでみたベージュのカーゴパンツの影が…。
「あれ?…あああーーーーっ!!!」
黒河会長その人である。
「来ちゃったよ~。今日は一人で集中するわ」
どうやら数釣りモードのはやし渡船は会長にも魅力的に映ったようだ。
なんだかんだで我々は大浦の一番奥の筏が割り当てられた。随分きれいな筏だが、実際人は入っているのだろうか。。。
幸先良いスタート!
エビの落とし込みからスタートするが、エサ取りがほとんど感じられない。虚無の海である。本当にこの状態からチヌが出るのだろうかと思われた。あまりに手がかりがない中で延々と落とし込んだり左右に振ったりしていても埒が明かないと思い、開始10分少々でさっそくダンゴ投入を始めた。慎重にオキアミの濃度を上げていくが、たまにゆるいダンゴをつつくような反応がある程度で、餌が出ていてもまるで食わない。
そこで潮下側に広角をいれるとすぐに反応。チヌはダンゴから遠ざかったままのようだ。

数釣りと言っても25センチを超えているのでそれなりに引き味は楽しい。NSR ASRA D1がちょうどいい感じに楽しませてくれる。
続けてダンゴでもヒットするが、抜けてから結構待たされた。
しかし5枚目までなかなかダンゴに取り付いてくれず、主に潮下への広角釣法で単発的な反応を察知、その直後の一投で釣る、というパターンの繰り返しとなる。
セクシーな洞窟
ふと岸側に目をやると、ひときわ目立つ岩肌と洞窟が、。

う「俺さあ、ちょっとあの岩見てて思ったことがあるんだけど」
木「わかるよ。同じこと思ってた」
「「あの岩なんかエロくね!?」」
こんなに汚い「「俺達私達入れ替わってるー!?」」的なやつはなかなかお目にかかれない。
そうこうしているうちに弁当船がやってきた。
「どうですかー?」
「こっちが五枚でそっちはまだ」
そう、相棒はなかなかアタリが出なくて苦戦中。NSR式ヌカ砂ダンゴでの釣りをかかり釣り初体験からやってもらっているが、思ったように釣れない。
で、ここから一般論だが、どんなダンゴを使っていても思うように釣れないと色々と人は疑い出す。いやむしろ自分の釣りの何が間違っているのかを検討するうえで疑ってかかることは必須項目である。しかし、そこで目先の、小手先のところを確信なく弄りだしてもあまりいいことはない(ことをベテランは知っている)のだが、どうにも気になって重要ではないことにこだわり始めるのはよくあることだ。
ルアーだと、なかなかヒットしないからとルアーサイズをどんどん落としていって、結局釣れない、みたいな状況とよく似ている。
大事なことはそこじゃない、に巻き込まれる。
だから粘り強く、根気強く励ましながら状況の好転を待つ。ぽつりぽつりとはいえ、全く同じ釣り方で釣れているのだ。
はやしは弁当もあるでよぉ
ネタが分かる人はよく鍛えられた名古屋人か50代以上であるが…。
おなじみの弁当は相変わらずおかずはもちろんとにかくコメがうまい。梅干しとの相性が抜群に良い。しかし、開封した直後に気圧が急低下。
尻神様の呪い
20秒くらいでさっきまでほんのり暖かかった曇りの海は真冬の嵐になってしまった。爆風と横殴りの大雨に弁当に蓋をするひまもなくカメラの三脚は倒され、パラソルは飛びそうになる。パラソルのシャフトに必死でしがみつきながらひたすら耐える。
息苦しいくらいの勢いだ。
ダンゴもどんどん雨水がしみていく。といってもそれどころではない。まずこちらはパラソルを諦めてたたむことにした。
パラソルをたたみ終わったあとはダンゴ桶をかかえてトイレと呼んで憚らない緑色の囲いに閉じこもり、ひたすら嵐が通り過ぎるのを待ち続けた。その様子も隣の筏に乗っている方から帰着時にツッコミが入るなどなかなかシュールな状況だった。
午後は時合の好転を期待するがなかなか決め手に欠ける
結局、ひたすら粘って広角を続ける展開。
雨でずぶ濡れの体は冷えていく一方で、根性試しのような釣りになってしまった。
通信氏もなかなか掛けることができず「心が折れた」の繰り返し。なんとか励ましながら、4時過ぎにようやく一瞬いいタイミングがやってくる。
自分の釣座で当たりがないということで筏の側面で落とし込みをやっていたところ、こちらは左に投げて一枚ヒット。その直後に彼にもチヌは微笑んだ。

思い返せば、あらゆる意味で黒歴史なので思い出したくもないが、初めてはやし渡船に来たときはなんの手がかりらしい手がかりも得られずチヌボーズに終わった。まだNSRを手にするちょっと前の話だ。
その次にはニシダさん、黒河さんといっしょに乗って、実釣を直接見ることができた。その日は状況が芳しく無く、公式向け動画は残さなかったが、ASRA MAX F5をお借りしていいチヌを釣った。
そしてその後単独で乗って、少ないながらも自力でチヌを複数釣り上げている。
そこで実感したのは、「余計なことを考えず、シンプルにやるべきことをきちっとやる」こと。ごちゃごちゃと余計な情報に振り回されてもいいことはない。ただのノイズにしかならない。

コツを掴み、適切な手段を組み立てないと釣れないのがチヌ。なめてかかると釣れないし、一生懸命複雑なことをやるよりシンプルに構えたほうが釣れたりする。
基本をしっかりこなしていけば釣れるという意味ではその人の釣りへの向き合い方が如実に釣果につながるターゲットだと思う。

ともあれ、写真撮影対象になんとか入れてもらえてこの日は終わった。ただ、黒河会長は31枚釣っている。あの状況でマジかよって感じだ。動画も収録してもらったので、公式チャンネルから公開する予定だ。