「今度海香行きませんか?成長した自分を見せたいんですよ」
とリトル門脇選手。
このところ単独釣行や他の人との釣行が多くしばらく同船していなかったので、独り立ちと言うか、色々試したい感じになったんだろうなあと思っていたが、突然の誘いだった。NSR ASRA MAX 160V3を手に入れて釣りが別次元になったという彼はついに果し状を送りつけてきたのだ。
海香を選んだ理由はわからないが、ここでも書いているように彼はメキメキと上達中で、同じく上達を続けている私に迫ろうという勢いである。本当は足元にも及ばないが、と言いたいところだが、今度こそは展開によってはやられるかもしれない。それが乗っ込み狙いである。
日程調整および天気読みの日々が続く中、日々の仕事は忙しさを増し、健康診断やら車検やら免許の更新やら雑用も重なり、そして無理やりねじ込む渓流アタックと人付き合い。ご存知のように毎週末に雨が降るというこの頃のいやらしい天気予報に辟易としながらチャンスを伺ってきた。
そして5/31はギリギリ雨が上がりそう、という予報になった。
しかし私の読みは「雨で水が冷えるか水潮になり、風で冷えるし釣りもしにくいだろうから展開は厳しいものになると思う。難しくて苦労する可能性が高い」だ。ソロ釣行だと躊躇する天気。季節外れの強烈な北風が予想されていた。しかしすでに戦闘モードになっているらしいリトル門脇選手は予約完了の報告をLINEに入れてきた。
「エビがない!」悲痛な叫び
あまりに忙しく前日に十分なエサを用意できなかった。活餌は鳥羽のエサキチで買えばいいやと思って駐車場に入る。車を停めると、近くにあった車から男が降りてきて近づいてくる。なんだ、不穏だな…と思って様子をうかがっていたが、近づいてくるにつれ正体が明らかになった。リトル門脇選手その人である。
「おはようございます。あちこち回ったんですけど、ここも含めてシラサエビが売り切れてるんですよ」
全部ってのはすごいけど、時期的なものもあるだろうなあということで戦略を切り替える。サナギとアケミ貝を購入することにした。
「ボケ10匹じゃ心もとないか・・・もう10匹買っていきます」と門脇選手。
今回私が用意した餌はオキアミ1/8、エサキチのさなぎ&コーンの詰め合わせ、ボケ20匹、エサキチのアケミ貝一袋。このところずっとシラサエビを使う釣りをしていたが、久しぶりにどっしりした陣容である。
乗っ込み狙いでタックルはいつもよりワンサイズ強く、ASRA D1が活躍
NSR ASRA D1にXtreme IKADA2号のラインを、ASRA MAX F2には同じくXtreme IKADA1.5号を組み合わせた。風が強いことを考えると細めのセッティングで釣りやすいというのはあるが、どうも釣果情報を見ていると結構な確率で45cmオーバーが出ていることを踏まえて後悔しないセッティングを重視した。
ところで、技術的な話題は別記事にまとめるので今回は釣行記として読んでもらえればと思う。
朝から横風、横殴りの雨
どうもこのところかかり釣りの時の天気に恵まれない。それでも前回よりは遥かにマシ。寒いけど。
エサ取りも集まるまでに時間がかかり、しかしチヌの気配がなかなかない。その状況にしびれを切らし、早い段階でダンゴ作りを始めたリトル門脇選手にチヌとは違う黒い影が忍び寄る。
カラス
ふと横を見ると、カラスがいた。門脇選手のエサを物色中だ。あれ?と思って状況を判断したときには、カラスは口からボケをこぼしながら飛んでいった。
「あーーー!!ボケ食われたぞ!!」
「ええ!?」
被害状況を確認しに行く門脇選手。
「ボケ17匹です」
「3匹も食われたのか!」
「違います。17匹食われたんです」
「カラス容赦なさすぎワロタwwwwww」
それにしても気の毒すぎてどうにもならない。一番高価で、ワンポイントリリーフエースであるボケを封じられたのは痛い。
「気をつけないとまた来るぞ!」
二次災害は絶対ある。用心しすぎることはない。
またダンゴ作りに戻る門脇選手。
程なくしてカラスがまたやってきて、今度はサナギをパッケージごと持っていった。
「マジカヨ…」
精神的なことも技術のうち(初代タイガーマスク®)だが、カラス対策も技術のうち、なのかもしれない。ともかくオキアミとコーン、アケミ貝以外を封じられた門脇選手があまりに不憫なのでサナギを少し供出した。
周囲の筏にも沢山の人がいるにも関わらず、それからもカラスは門脇選手から絶妙な距離を保って隙を伺っていた。賢い。
傷心の門脇選手に光が当たる!?
オキアミのダンゴ釣りを淡々と展開していた彼にいかにもチヌらしい魚がヒットした。らしいと書いた時点であれだが、あと少しで姿が見えるだろう、というところで痛恨のバラシ。40センチくらいは確実にあった。やり取りを見ていて、色々気づいたことは話したが、やっぱりちょっと強引だ。せっかくASRA MAXを使っているのだから、ロッドをもっと隅々まで使っていきたい。
それから小一時間してこちらにもチャリコがヒットし、オキアミのダンゴ釣りやサナギの落とし込みでヘダイが釣れ始めた。そのパターンでオキアミのダンゴで抜いてからのいちアタリを、、、と構えていたところ穂先を一気に絞る魚が。どうせヘダイだと思ったら、小さめながらチヌだった。

その後撒き餌を兼ねて半貝を落としたりするが、ふぐやヘダイの餌食になる。それでも時折いれるようにしながら、この日はあまり広角をやらずにちょこちょことダンゴを打ちつつサナギの落とし込みで落下点の周囲1.5m程度を探るような感じで進めていた。
決め手になるような状況変化もないまま時間が過ぎ、雨も上がったが風はますます激しくなっていく。普通の人なら穂先のアタリが全く読めないと泣きを入れるような状況だ。
それを完全に克服とまでは行かないが、実はあたればちゃんと分かるのである。NSRなら。そしてある「角度とラインテンション」なら。
午後にようやく一瞬気配が出てそれを逃さない
サナギや貝に明らかにそれまでと違う触り方があり、チャリコが静かになった。オキアミが残る。奴はいる。
サナギを時々跳ねさせ、見つかるのを待つ。ちょんちょんといじられる反応。その直後にわずかにすっと穂先が入る。本能的なレベルでこれはいいチヌだと確信して全力で掛けた。D1がバットから弧を描く。
久々の良型を逃すわけには行かない。走らせないようにしっかりためて、距離を詰める隙を伺う。しかしなかなかリールを巻くタイミングをくれない。
しばしロッドを保持したまま耐える。巻くタイミングはほんの一瞬しかなかった。時折突っ込みを見せるが指ブレーキを駆使してダッシュを減衰させ決して加速させない。そのまま粘っていると徐々にラインは横に向かっていく。走ろうとしたチヌが走れず、振り子のように左方向に浮かされていく。
しかしそれを放置していたらロープが怖い。どこかで巻き始めて距離を詰めていきたい。十分にロッドの負荷が減衰するのを待っていられず、しかしチヌのスタミナもある程度落ちたと判断して詰めにかかる。すると8メートルほど左前でギラッと魚体が光った。
「でっか!」

これはますます絶対に仕留めなければいけないと強く思い、改めてロッドを握り直す。決して慌てず、距離を詰める。タモが届く所まで来たが、まだ油断禁物と言うか、この局面が危険なのだ。いい角度で頭をこちらに向けるまで何度かやり直してランディング。


それにしても、体高が高くて立派な体躯の乗っ込みチヌである。そうか、みんなこれを狙って足繁く通うのか。。。
その後のおかわりを狙うが、どうも続かない。色々手は尽くしたが、状況が好転する瞬間を感じることはできなかった。
竿頭ゲット
海香といえば、去年の春先にかなりシビアだと言いつつSAYOネキと2回釣行して2回とも坊主に終わっている。今回も結果が出なかったら変な苦手意識ができるんじゃないかと不安だったが、数少ないチャンスを見逃さず、うちPの原点とも言える「ダンゴで状況を仕上げておいてその周りをうろついているチヌを察知しサナギで食わせる」戦術が久々に有効な局面だった。

最後にうんこたれてせめてもの嫌がらせをしてきた大チヌだが、久々に乗っ込みらしい釣りができてよかった。
門脇選手は惜しくも今回は下剋上ならずだったが、いずれやってくるだろう。こちらも腕を磨いて置かなければなるまい。
「成長したところを見せたかったのになあ」
と悔しがっていた。しかし、一番の敵はそういう「欲」かもしれないぞ。しらんけど。
それにしても、ボケだけがボコボコ当たる日じゃなくてよかった。もしそうだったら流石に少し分けてあげるが、本当に気の毒だった。
大変だ!ホイコーロー星人が来るぞ!
帰りはおなじみ鳥羽の中華料理「弁慶」で今回は天津飯。通常の天津飯のうえに、溶き卵が美しいあんがたっぷりかかっている名物料理だ。

そしてここでしか食べられない味なのでぜひおすすめしたいのが餃子。にんにくと野菜の旨味がすごい。

中華料理を食べに行くと98.9%の確率でホイコーローを食べたがる門脇選手。出身はホイコーロー星ホイコーロー国ホイコーロー州ホイコーロー村大字ホイコーローホイコーロー町ホイコーロー番地に違いない。美味しいからいいんだけど、あまりにうまそうに食べるのでたくさん食べてもらった。