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拝啓東海釣りガイド様、今までありがとう。私は今を生きます。

かつて、東海釣りガイドというご当地釣り雑誌があった。いや、正確には今もあるのだが、今はフリーペーパーとして釣具店などに置いてあるらしい。らしい、というのは、それから手にとっていないからだ。

平成も初期の頃、当時知多堤などに時々連れて行ってくれた父がド下手くそなりに釣りにハマっていた頃で、会社の帰りに東海釣りガイドを毎月買ってきてくれて、それを貪るように読んだものだ。僕ら親子にはゼンメしか釣れないのに、大人たちはやれクロダイだ、穴子だ、マダカだとそれはそれは立派なお魚を釣り上げているグラビアページがたくさんあり、本当に同じ場所でこんな事が起こるのかと不思議に思いながら、いつか自分もそういう釣りをやってみたいと思いながら何度も何度も読み返した。本当に大好きな雑誌だった。

今思えば、あの頃の釣りガイドは名古屋釣法でのクロダイネタが非常に華やかりしころで、あの頃に目に焼き付いた黒光りする魚体の写真が今の自分の釣りにつながっているような気がしてならない。とにかく大人が釣るかっこいい魚、賢い魚、パワーのある魚。一体どこで何を食ってるんだろう。落とし込み?へえー、でもそんなんで釣れるんだろうか?なんて考えていた。

そんな東海釣りガイドが最近休刊となり、フリーペーパー化したという話を聞いて、公式サイトを見に行った

http://ttg-net.com/

うーん、15年ほど前で時が止まっている。スマホ対応もやろうとした痕跡は見えるがさすがにリンクが死にすぎ。いやまあ、それなりに事情があるわけだしそれはそれでいいんだが、「メディア理念」というページを読むとWEB屋やってる釣り人として非常に残念な気持ちになった。憧れのメディアがこういうことをメディアで語っているのが悲しい。

引用しようと思ったけど、ページへの直リンクはご遠慮くださいって書いてあるからやめとくw画像とかならともかく「リンクは自由だけどページへの直リンクはご遠慮」ってなんだ???どういうことかわからないけど、尊重する他ない。そういうことで、各自で「メディア理念」をごらんいただければと。

要は、ウェブメディアやSNSでの宣伝がうまく行かないのは人の目に触れないことと、ユーザーの望む情報を提供できていない、ペーパーメディアならそれが可能である、ということが言いたいらしい。いやいや、それはメディアの性格の問題ではなくて、マーケティングとか戦略の問題ですよね。全体を読むとどうも時代についていけなかったという印象が拭えない。もったいない。

それでもフリーペーパーで健闘していて相変わらず中身の濃いコンテンツを発信しているようなので、ネームバリューは生きているしファンもたくさんいるんだなあと思う。すでに基盤を持っているメディアはそういう残り方もあるが、ウェブマーケティングよりペーパーメディアの方がうまくいくというのは流石にいまどき無理筋だろうと思う。

それでは別のご当地釣りメディアをご覧ください

関西のつり
https://memenet.co.jp/kantsuri/

「関西のつり」は釣りサンデーと並んで関西の釣り雑誌の似大巨頭の一角だった。今はウェブメディアがびっくりするくらい充実していて更新頻度も非常に高い。週刊釣りサンデーも関西の釣り雑誌として人気で老舗だったし、編集長の小西さんは間違いなく一つの文化を作った人だった。しかしやはりこちらも廃刊となり、今は別会社に譲渡され生まれ変わったらしい。

TSURINEWS
https://tsurinews.jp/

週刊つりニュースは今も新聞としてコンビニで見かけるが、同時にウェブメディアも運営している。記事の質も良く、さすが釣りメディアの大御所といったところである。たぶん、みなさんも釣りの何かを検索していて自然とTSURINEWSのコンテンツに行き当たっていることは一度や二度ではないはずだ。

ちゃんとウェブ上のオウンドメディアで成功している釣りメディアがあるじゃないか

いずれもPCスマホ問わず快適に閲覧でき、また多数のライターが頻繁に各ジャンルの記事をリリースしている。さらに適切な量の広告を挟むことによって広告収入を獲得しているが、おそらく相当なPVを獲得しているし、それだけ収益性も高いはずだ。じゃないと、こんなに頻繁に記事が投稿されるわけないよね。出版に比べてコストも抑えられる。正直サーバ代なんてたかが知れている。
タイアップ記事とウェブ広告の収益で運営しているのだろうと思うが、グーグルなどの広告配信業者が広告のルールを大幅に変更しない限りは毎週記事が蓄積され、その分アクセス数が増えていくので基本的に右肩上がりで収益は伸びるのである。これだけのボリュームのメディアに比べると、うちのブログなんかカスどころか無である。太陽と砂粒くらいの差がある。

ちなみに「関西のつり」、関西地方の釣り場に行くことは基本的にない(若狭方面は別として)けど、読み応えがあるので毎日何かしらの更新を楽しみにしている。

フリーペーパーって広告で成り立ってるじゃん、で、その広告料が高いよねって

WEBアナリストという仕事柄フリーペーパーとウェブメディアを比較した資料もよく作るのだが、今まで携わった案件ではフリーペーパーだけで完結して売上を伸ばすのはなかなかに厳しいというのが正直な感想だ。自治体ごとに配布されるようなタイプのフリーペーパーでもA5版1/2ページの広告でも15万円なら安い掲載料だよね、という世界である。しかも配布したらそれで終わり。なのでクーポンなどをつけたりするのだが、これとWEBやブログが連動していてインスタなどをフォローさせたりとかLINE会員に誘導したりとかして次のステップで来店を促すような使い方をしてようやく一定の成果を検証できる。

さて、雑にSNSを使ったところで見込み客やファンを獲得するのが難しいことは同意なのだが、それはちゃんと結果が出るまで試してないからでしょ。やり方や戦略、継続性の問題であって、メディアのせいにしてはいけません。成功しているところは成功しているんだから。使えるならAbemaでもTikTokでも矢文でも狼煙でもなんでも使えばいい。

ペーパーメディアを維持するために広告営業

脱線したが、フリーペーパーってのは広告枠を埋めないと成立しないモデルであり、さらに印刷業と一蓮托生である。ということは広告枠を埋めるための営業が必要で、さらにフリーペーパーを置いてもらうための営業もしなければならない。1万人に手にとってもらうためにはどうしたら良いのだろうか。もちろん、実績あるメディアならその苦労もゼロから始めるに比べて大したことはないかもしれないが、広告を獲得し、編集し、という作業自体はなくならない。

あんまり関係ないかもしれないが郊外配布型のフリーペーパーは在宅デザイナーなどの低単価根性労働によって支えられている現実がございまして、ある広告会社から打診されたのが「A5版1ページの広告デザインしてデザイン料6000円」というあまりにご無体な案件wさすがにやらなかったが、今はどうなんだろうか。

あと、釣り雑誌全体的に「これって記事じゃなくて広告を買ってんじゃないの」と思いたくなるくらい広告が多いですよね。カラーページの半分以上広告だったりしてw

ウェブメディアは立ち上げをプロに任せるとお金かかるけど

確かに上記のような大型オウンドメディアを立ち上げると200~300万くらいの資金が必要かもしれない。ちなみに、業界最安値クラスの通販印刷プリントパックですらフルカラーの中綴じ冊子コート紙90kgで1万部印刷すると21万円余である。フリーペーパーだともっと薄い紙を使うのでもう少し単価は下がると思うが、編集やデザインが必要になるためそれだけページごとにコストも乗っかることは忘れてはならない。あと配達とか。

一方、ウェブメディアを一つこさえるイニシャルコストが安めに見積もって200万だったとして、記事サムネイルを作る作業を外注してライターに謝礼を払っても2年位で情報量もコストもアドバンテージを得られるのではないかと思う。しかも記事はサーバ上にどんどん蓄積されてどのページも常にアクセスされる環境にある。これがどんどん増える。検索エンジンにも強くなる。メディアとしての厚みが増す。ペーパーメディアはアーカイブできないのが弱点である。

ウェブ広告枠が生み出す利便性と収益

そして広告はサイト上に枠だけ置いておけば配信業者が勝手に閲覧者の好みや閲覧履歴、その他ターゲティングの結果適切なものをあてがってくれる。つまり広告を獲得するための営業コストがゼロになる。キャッシュフローや償却の面で遅れを取るかもしれないが、投資のようにじわじわと効いてくるものだ。ウェブマーケティングを理解していない人はしばしば、WEBでバズってどかーん!と勘違いするのだが、それは間違いである。じっくり取り組むしかない。あれは宝くじに当たるようなものでしかない。したがってそんなものは狙うものではない。

WEB戦略が失敗するとしたらあるいは付け焼き刃のSEOをやってしまったパターンだろうか。今どきSEOだのMEOだの言う業者は相手にしなくていいです。ちゃんとしたストラテジストを内部で育てるか電話営業しなくてもやれている人を雇ってください。

10000人にリーチさせるために必要なコストは圧倒的にWEBのほうが安い

無関心な1万人ではなく、きちんとターゲティングすれば購買意欲の高い1万人に広告を配信できる時代だ。下手な代理店に騙されたら別だが、ちゃんと段階をふんでコンテンツを積み上げ、適切な予算と適切なターゲティングを行えば折込チラシより圧倒的に安く、そして興味のある人にだけ情報を発信できる。

そしてウェブメディアを運用する側はそうやって入札された広告を掲載してあげるというわけだ。もちろん、宣伝のためにこちらから出稿してどっかのブログに掲載してもらってもいい。単価、ターゲット、文章を考えて投資すればあとはグーグルが適切な配信先に送り込んでくれる。クリック課金なので無駄が少ない。

実はこの思考と行動のプロセスというのが、魚釣りによく似ているのである。釣りが得意なら、こういう情報をうまく活用していくこともまた楽しいのではなかろうか。

メディアとしてのあり方

自分たちの従来のやり方をオススメするための文章で、新興でも一定のポジションを確定させている宣伝手法を公式サイトにて間違いと断じてしまうのってちょっとメディア企業としてスマートでない。

釣りを衰退させたくない、という理念がお有りなら、デジタルネイティブ世代をどうやっても取り込まないとそもそも成立しない。デジタルネイティブ世代である現代の10代だって「魚釣りの記事を読んでワクワクする」はずだ。彼らの心を奮い立たせるようなコンテンツを、彼らの使うメディアで提供するべきだろう。

思うに、You Tubeで具体的な釣り方の解説をきちんとやっているチャンネルはそれほど多くない。バラエティー的なチャンネルは多いが、歴史あるメディアならアクセスできる名手はたくさんいるはずで、彼らが釣りを教える動画は「マジモンの釣り師候補」には刺さるのではないかと思う。ニッチに走っていい。

どうか、令和時代を生きる名古屋の釣りキチがまた一人増えますように。

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