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ゲーマーにこそ、へらぶな釣りを勧めたい

ゲームフィッシングという言葉がある。これはもはや定着してしまったのでアレだが、本来は「遊漁による釣り」を表す言葉で、職業としての漁業に相対する言葉である。まあそれはともかく、釣りはゲームとして面白い。

へらぶな釣りと言うと、(へらぶな釣りをおすすめする記事ではもう散々言及されているにしろ)、年配の人がのんびりやっているというイメージを持たれがちである。そういうイメージそのままの部分もあるけど、その真逆に死ぬほど忙しい競技の釣りというジャンルもある。2020年からへらぶな中心の釣りライフに入って、その両方それぞれのスタイルの釣り人と知り合ったが、どっちの釣りも同じように魅力がある。

人と競うのが好きな人もいれば、自分と向き合うのが好きな人もいて、自然と向き合うこと以外興味ない人もいる。

そのどれも同じように素晴らしい楽しみ方だ。ちなみに自分は自分と向き合うタイプである。よく釣りたいけど、人に優越することは目標ではなくて、自分が楽しく釣りができるために、よく釣れるようになりたいだけで周囲のことは興味がない。しかし、人と並んでの釣りとあれば自分なりにヘタなりに作戦を考えて取り組むことになる。それは一人で釣りをするときとは違う種目のゲームだと考えている。ときには下手なりにバチバチにやるときがあります。

で、ゲーマーにおすすめしたい理由は後述するが、少しゲームフィッシングという概念について愚説にお付き合いいただきたい。

さて釣りのゲーム性とは何なのか

自分の取り組み次第で結果が違ってくるというところと、攻略法は様々あるところ、これがゲームフィッシュとして成立する一つの要件だと思う。へらぶな釣りというのは延べ竿にハリが2つぶら下がったウキ釣りという超シンプルな釣りだ。にもかかわらず、年間を通して、場所によって、様々な釣り方があり、あれがいい、これがいい、と情報交換も盛んだ。ハリスの長さが数センチ違うだけで明暗を分けるがそれに気づくかどうか、みたいなシビアさもある。それで攻略法が合っていると一気に数は伸びる。管理釣り場では同じように釣っていても、倍、三倍の差がつく。運の要素が少ない。

野釣りはまた違う種目としてのゲーム性がある。野釣りの例会などを除いて、人と競うというよりは自分の中の軸との戦いになることが多いかと思うがこれはこれで達成感あるゲーム性の高い釣りだと思う。ポイント選び、釣り方、プロセス、色んな要素が釣果と関連する。やってみれば、思いの外簡単に感じるときもあれば思うように行かないこともあり、それでも釣る人はしっかり釣っているのを見て歯ぎしりするだろうw

いわゆるゲームフィッシュとして人気のある魚種は大きく2つに分かれると思う。ひとつは、数釣りが可能なチヌ、鮎、シロギス、ワカサギのような魚種、もうひとつは一発大物、カジキやサクラマスといったオール・オア・ナッシングの世界だ。それぞれに魅力があるし、どちらに傾倒するかはその人の性格や釣りとの出会い方によるだろう。

誰でもエントリーできるけど突き詰めるとどこまでも深い そこがゲーム性

ではヘラブナはどうかと言うと、数釣りも、一発大物も、両方狙える釣りものである。最近のメディアでは比較的管理釣り場を推していて数釣りがメインに取り上げられる。トーナメントや例会も一般的には釣った総重量でランキングされる。一方で一発大物狙いと言うと、ダム湖や野釣り場に通い詰めてはじっくり腰を据えて狙うという全く違う釣りのようなアプローチになる。どちらも同じ魚を狙う釣りだし基本的な道具やシステムも同じだが、目的によってそのセッティングは全く違ってくる。数釣りも大物狙いもそれぞれに外の世界からほとんど不可視、いや、片足突っ込んでる私にも全く知らないノウハウや世界が奥深く存在する。どのルートを追求するかはその人次第。そのすべてを網羅することは可能なのだろうか?一般的なアングラーには不可能とも思われるだけの奥深さがある。ほぼ間違いなく私などはアラフォーであるにもかかわらずその全貌を見る前に寿命を迎えてしまうだろう。

掘り下げると深海、いや底なし沼のようにその奥が見えないほどに深いへらぶな釣りだが、実は単に釣るだけなら難しくない。真冬でもない限り、普通に定番の仕掛けを用意し、餌袋の指示書き通りに餌を付けてやればまあ、一応そのうち釣れる。アタリのとり方とアワセに慣れさえすれば子供にも普通に釣れる。取材で釣り自体が初めてという人に11月のへらぶな釣りに挑戦してもらったが、やや食い渋りの時合の中で1時間もしないうちに釣果を出した。入り口はそのくらい気軽な釣りものである。

「誰にでも釣れる魚だけどテーマを持って取り組むだけの魅力がある多面性」がへらぶな釣りの魅力のひとつだと感じている。

で、ゲーマーにおすすめしたい理由とはなにか

ゲームと言ってもぼーっと「スタミナ」を消費するようなソシャゲのことではない。PCゲーム、とりわけFPSやRTS、MoBAのような「頭脳とフィジカル」を駆使するゲームのことだ。おじさん世代的にはAoEシリーズ、CoDシリーズ。アラサーだとLoLとかR6、更に若いとDotaとかAPECとかフォートナイトとかまあそのへんが人気コンテンツなわけだが、それらのゲームを楽しめる人ならきっとへらぶな釣りも楽しめると思っているのである。

根拠というか、まず最初に自分がもともとそういうゲーマーで、へらぶな釣りにストラテジーゲームのような要素を見出して楽しんでいるからそう思う、というのがある。この文章もゲーミングPCで打っている。もともと対してうまいわけではないがすっかり加齢によって老化した体にFPSはきつい。MoBAなんてもっと無理。死ぬ。仕事でガッツリ削ったMPを使えるだけの余力が残らない。そんな自分でも没頭できるのがこの釣りである。アウトドアで日光を浴びるので健康にもよい。ウキを見ていると忙しいので他のことを考える余裕がない。したがってマインドフルネスにも良い(?)。

そして、へらぶな釣りにはPCゲームとの類似点が色々ある。バスフィッシングもいいが、それと同じようにこの釣りにも釣りを純粋に深められる要素が詰まっている。最近は業界も若返り、いろんなチャレンジをしている。雑誌も、釣り場も、釣り人も新世代のへらぶな釣りを模索し始めている。私もその一人で、仕事として取り組んでいる。もっとアクティブに楽しめる釣りだということを知ってほしい。

自分だけのビルドオーダーを組め!マクロを学びミクロを鍛えろ!

どのキャラを使うか、どのアビリティを組み立てていくか、どのユニットを生産するか、どのTierルートをとるか、こうした選択がストラテジーゲームを奥深くする要素と言っていいだろう。将棋で言えば振り飛車か居飛車か、速攻か持久戦か、なんてことを考えて自分なりに得意な引き出しを一つ二つ育てていくような部分だ。へらぶな釣りも同じようにビルドオーダーが存在する。

釣り場や状況に応じ、両ダンゴで行くかセット釣りで行くか、みたいな大まかな釣法の別から始まり、竿の長さ、ウキ、針、糸、そして餌の配合とあらゆる要素を組み立ててその日の釣りに合った「方針」を決める。そして釣り始めると予想通りだったり外れたり、あるいは状況が変化したり、一筋縄でいかないので対応を迫られる。あるいは上級者ともなるとその変化を察知して先手を打って戦術を切り替える。できる人ほどプランBをもっているし、自信を持って切り替えていく。ちなみにうちの動画でもおなじみの「兄弟子組合員」氏は人が釣法を切り替えて釣れそうな雰囲気を察知してからその釣りに切り替える傾向がある。コバンザメ戦法である。ずっと「どうしようかなーセットに変えようかなー」などと3時間くらい言い続けている。で、こちらがそれに呼応する形で釣り方を変えてうまくいくと乗っかってくる。自称アラサー本当は還暦なんで、そろそろ自分で決断してほしいものである。

そして状況に合わせた引き出しの数、そして一つ一つの引き出しの効果を発揮するにはミクロ領域での調整やテクニックも必要になってくる。餌の付け方とかハリスの長さとかほんのちょっとした違いが差になる。小さな違和感に気づいて対処するか、あるいは漫然と続けていくかでその日一日の釣果はまるで違ってくる。あっちから来るのを待つ、という釣りも有りだが、よく釣ろうと思うと、こっちから仕掛けていかねばならない。魚と同じように、こっちも学習して対処していく必要がある。

釣座では天気、水温、混雑、風など色んな要素が頭を悩ませる。しかし都度悩んで場当たり的な対処をしていてもなかなか安定した釣果を出せないことに不満が溜まっていく。色々試行錯誤しているうちに、だんだん自分の得意なパターンが出来上がっていく。この状況ならこの釣り方で、というマクロな方針から、ウキの動きがちょっと落ち着かないから餌の付け方を変えてみよう、というミクロな小技まで取り入れたい要素はたくさんある。それらが自分の中で体系付けられてくると、だんだん自信を持って一日の釣りを予想し、組み立てができるようになるし、実釣時に思わしくない状況を勇気を持って切り替えできるようになっていくのではないだろうか。

あえて分類するとこんな感じだろうか。

マクロ領域

ミクロ領域

へらぶな釣りというのは魚を寄せながら徐々に「釣れる状況」を作っていくゲームだ。ルアーフィッシングでは一般論としては一発目が一番期待値が高いわけだが、へらぶな釣りはその逆で、適切にエサを打つたびに自分の釣り方に魚が吸い寄せられ、同時に魚の気分や習性に自分が正しく合っていくとよく釣れる。実はこれがなかなか良くできたシステムで、その場で動かずともPDCAを回していくことで成果が期待できる釣りなのである。

ウキの動きを注視しているのはあたりだけを待っているのではない。その上下動にはたくさんのヒントが隠れていて、ベテランはその動きから水中の状況を読み取って次の餌のつけかたを微妙に変えたり、振り込み方を変えたり、パッと見わからないような細かい調整をしている。上手な人は一投ごとに得られる情報量と、対処するアクションが濃い。いわゆるガチ勢である。なぜそうするのかを熟知していないとなかなか真似できない領域でもあるが、そのうちの一つでもわかって実践できると一気に釣果が伸びる。なのでやり込んでいる人たちは「練習」と称して釣り場に出かけるのである。

単独で追求してもいいし、コミュニティを利用してもいい

さてやってみようとなった場合、メーカーや雑誌がテクニックや初心者入門といったコンテンツを展開しているので、まずはそういった情報から入ってもいい。YouTubeにも色んな動画が出てきた。これらを参考にしていくのがまずは無難である。やってみて、最初は釣れなくてもいい。釣れない時に疑問に思ったことを解消していけばいい。というか、その情報だけでは太刀打ちできなくなる日が来る。「わかったつもりがわかってない」状態に陥るからだ。

それで本当は生きた情報、その釣り場での最適な釣り方を人に教われるようコーチがいたほうが圧倒的に成長する。が、最初に相性の悪いコーチに出会ってしまったり、適切なコーチができない人に関わってしまうとしんどい。道具も色々欲しくなるし、良いスタートアップにはなかなかハードルが多い。これがこの釣りのしんどいところだ。

それをブレイクスルーするには、例会やグループなど良いコミュニティに出会うことが大事だ。活発に情報交換がなされていて、そこで得られる情報はウェブメディアでは得られないことが多々ある。実際に釣っているところを見学できるのも大きい。ヘラブナ釣りの集団は偏屈で近寄りがたい、、、という印象を持っている人も少なくないと思うが、管理釣り場の管理人に相談して好みに合ってて雰囲気の良いグループを紹介してもらうのも手だ。野釣りなら、人をゆっくり観察する時間もあると思うのでそれから声をかけてもいいだろう。今風のアプローチとしては動画配信者のロケ地に通って声をかけてしまうというのも有りかw

ともに楽しめる姿勢で臨めば、より楽しい時間の扉が開くし、ここまで読んでくれたあなたなら、間違いなく、はまる。

釣り場でお会いしましょう!

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