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へらぶな釣りの今後について私見をまとめる3【2021年5月時点】

連載記事なのでお時間が許せば初回から読んでもらえるといいかもしれない。

さて、前回では新規参入のへらぶな釣り体験者の入口戦略、出口戦略、そしてそれの設計をするうえで生じる既存プレーヤーとの対立の構造について述べた。

「一度やってみようかな」の方を招くための環境づくりの重要性、そしてリピーター化に成功したら次は「本格的なヘラブナ釣り」への出口であり次のステージの入口に自ら進んでいくので、その先は現在のプレーヤーやメーカー、メディアがやれている部分なので、とにかく最初の入口を整えるのが先だ、という旨を述べた。そして、最初の入口の先にあるものの整備は次の段階だ。今後、このあたりの取り組みが必要になってくる。具体的にはどういうことか、次にあげていく。

おさらい:まず知ってもらうところから

私は釣り場の経営者ではないが、インターネットを用いたプロモーションに関して職能を生かせるでそれを活用して入口作りに貢献しようとした。このブログやYouTubeもその一つである。まずは、知ってもらうことからスタートしなければ始まらない。へらぶな釣りとはそもそも「知られていない」のである。やっている人間は忘れがちだが、いろんな釣りがある中で、うっすら広い知名度はあるけど、実態を知っている人は釣り人口に対して少ないだろうし、釣りに興味がある未体験者にとってはなおさらである。いろんな釣りがあって、どれにチャレンジしようかなとなったときに最初に選ぶジャンルとしてへらぶな釣りが候補に挙がることはほとんどないのではないか。もともと釣りをやっていて、新ジャンル開拓として注目してくれる人は徐々に増えている感触があるのでそこが救いであるが、初手で選ぶジャンルとしてはかなりトリッキーな存在である。

それはすでに何度もこのブログで言及しているし、雑誌等でも書かれてきたことだと思うが、親や知人がヘラ師でもない限り、外野から見てへらぶな釣りとは隔絶された世界である。これは鮎釣りなどにも言えることだが、独学とか自発的に始めてもらうには情報が少なすぎる。暗黙のルールや釣り場の雰囲気など、ある意味本当に根性が据わっていないと入ってこられない。

しかし、へらぶな釣りはそもそも道具立てもシンプルだし、アユ釣りほど特殊な仕掛けや道具もない。ヘラ師は「便利だ」「よりたくさん釣りたい」「所有欲を満たして悦に入りたい」などの理由で道具がどんどん増えていくのであって、元来あれがなければだめ、なんてことはないはずなのだ。極限まで絞ると述べ竿、道糸、ウキ、ハリス、ハリその他小物、そして餌があればOKだ。細かくは省くが、量販店で2000~3000円も出せばとりあえず釣りになる。本格的にヘラブナ釣りを快適に楽しみたいと思ったら、まずは9800円の「めぐるへらぶな釣りセット」などが味方になってくれる。そして一部の管理釣り場ではレンタルに力を入れている。したがって、都市圏では道具の敷居はある程度下がっているといえる。

そしてYouTubeやSNSでもじわじわとへらぶな釣りに関する投稿が増えている。問題を共有している当事者間でネットワークも徐々に広がりを見せている。昨今の社会情勢を逆手に取り、ファミリー客も増えている。

あとは、ハード部分での入口設計である。

足を運んでくれた方が「また行こうね」といってくれる場づくりを

これは釣り場環境整備、ホスピタリティの部分の話になる。管理釣り場にしても、野釣り場にしても、初めて足を運んでくれた人が「もう行くのはやめておこう」と思ってしまったら大変にもったいない。というか、これまでそういう事例は枚挙にいとまがなく、ベテランのヘラ師だってあの釣り場は嫌だな、という経験の一つや二つは持っているものである。単純な好き嫌いは別として、釣り場で不快なことがあった、場所自体が不快だ、といったものだ。野釣り場ではこれをコントロールするのは一人一人の釣り人の行動しかないが、管理釣り場では経営活動としての環境整備、場づくりが求められる。

安全で、清潔で、快適な場づくりである。特に、トイレなど水回り。これは各釣り場でスタンスもさまざまであるが、リピーター数に結構大きく影響する要素ではないかと思うし、この辺もさんざん議論されてきたことだ。

桟橋の安定感、清潔感も重要な要素だろう。これも力を入れている釣り場があるが、桟橋は意外と維持管理が大変なものなので、なかなか追いつかないのが実情だ。

さて環境整備というと、ひとつのエピソードを思い出す。「焼肉屋さかい」の例である。

私が高校生の頃、よく親にせがんで焼肉屋さかいに連れて行ってもらったものだ。そして、めちゃくちゃ食うwで、今では業態変化などで見かけなくなってしまったが当時は飛ぶ鳥を落とす勢いで、待合スペースにおいてあるリーフレットを読みながらテーブルに呼ばれるのを待ったものだ。

で、そのリーフレットには創業の苦労、成功体験などがつづられていたが、今でも印象に残っているのは、「焼肉屋というと、高くて、古くて、煙たくて、汚くて、タバコ臭いおじさんの店だったのを、家族連れが快適に過ごせるようにあらゆるイメージ一新と店舗設計を工夫した」というくだりである。高いわけではないが、古くて、煙たくて、汚くて、タバコ臭いおじさんの店…どうも、へらぶなの管理釣り場と共通項が多いような?

これをやり切るのは相当な思い切りが必要だ。思い切った設備投資を行うか、時間をかけて少しずつ改善していくか、スタンスはいろいろだが、何もしないままでは価値創造ができず埋もれてしまう。

繰り返しになるが私は釣り場の経営者ではなく、そういった仕事を請け負っている立場でもないので言うだけの存在になってしまうし勝手なことを書くが、今後もへらぶなの管理釣り場を事業として続けていく意思があるかどうかは、そうした環境整備への手間とお金をかけているかどうかで見えてくるといえるのではないか。

しかし、いつも書いているように、資源は有限だ。潤沢な資金がある釣り場などなかなかない。せめて、運営サイドでやらなくていいことを整理して、その分やるべきことに注力できるようにしていってほしいと考えている。

釣り場の整備とホスピタリティから得られる「リピーター化」がひとまずの出口戦略だ

ここまで第1回から読み進めてきた方は、新規参入者の出口戦略とは何かだんだん読めてきたかと思うが、最初の出口戦略を一言でいえばリピーターになるストーリーの成立だ。へらぶな釣りに出かけることがライフスタイルの一角になるのが、とりあえずのゴールである。その次に、本格的に道具をそろえ、趣味としてのへらぶな釣りに浸透していく、、、というバトンタッチが成立すれば、それが続けて繰り返される仕組みに育っていく。

「やってみたらめっちゃ楽しかったから今度友達を連れてこよう」
「楽しかったからほかの釣り場にも行ってみよう」
「続ける気持ちになったから本格的に道具を揃えてみよう」

こうなってくれると、いい連鎖が始まる。間違ってもそこを踏みつけてはならない。あーじゃなきゃ、こーじゃなきゃなんて口うるさく言う一部ベテランがこれまでたくさんのニューカマーを踏みつけてしまったことは本当に反省すべきだと思うのだが、現状いなくなることはないし、意見を述べるのはお互いに自由なんで、我々のように「業界活性化」に取り組む者としてはそこからニューカマーを守らなければならないだろう。

どうか、釣り場で一日過ごしたあとは楽しい思い出を持ち帰ってもらって、また次につながってほしいと願う。

そもそもへらぶな釣りは本質的に楽しいのだから動機に対する変な小細工はいらない

ヘラブナ釣りの人口を回復させるにはどうしたらよいかという意見を動画や本など色んなもので読み聞きしたが、どうにもずれていると感じるものも少なくない。例えば、賞金が魅力的になれば良いだとか、釣りガールを動画に出せばいいとか、そういう意見はもう7周半回ってなんか違うわーと思うのである。

そもそも釣りが盛り上がるのは楽しいからであって金品がもらえるからではないのではないか?楽しいから人が集まって、人が集まるから注目され、注目されるからスポンサーが現れ、スポンサーがいるから商品や賞金が集まり、やがて大会が盛り上がるのである。まずプロを育成というのは順番が逆だ。ドマイナー競技のプロに生活が成り立つレベルのスポンサーが付くわけがないのである。この辺はまた改めて書くけど。

それと、釣りガール。たしかに、釣りガールが登場すると一気にウェブ上でもトラフィックは伸びるし、釣り場も華やかになるだろう。しかし、「釣りガールがいるから釣りに行くのではない」のである。そして、釣りガールという存在の「利用方法」が実に前時代的でオヤジ臭く、おっさんの鼻の下を伸ばすために消費されてしまってはまるで未来に向かわない。そしてそういう利用のされ方をした釣りガールは大量の好奇の目にさらされた結果、しばしばネット上で攻撃されたり粘着されたりして病んでしまいがちである。私は女性アングラーにこのようなポジションを期待するような仕事はしたくないのである(が、うまく言語化できず、激しく誤解を招いてしまったことがある)。

女性アングラーに敬意を払うということは、マスコットとしてじゃなくて、いちアングラーとして活躍していただくことに尽きると思う。そのような女性アングラーに共感して、女性アングラーが女性アングラーを呼ぶ・・・このような連鎖が起こってほしいと思う。

へらぶな釣りは、楽しいのである。その本質をなぜヘラ師自身が忘れてしまうのだ!!

純粋に、みんなで楽しんでいけばよいのであって、問題は伝え方である。そこは、すでに何人もいるヘラブナ系ユーチューバーやブロガーがじわじわと勢いを増しているので、まずはそこに期待したい。

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