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夜の五目前打ちのすすめ

近年はツールの進化もあり海でもルアーフィッシングが隆盛しているが、最近はそれに逆行して前打ち竿一本槍で近場のポイントをまわっている。昼は仕事で釣行できないので、夜に釣る。遠投はルアーの方が圧倒的に有利なのだが、港湾部で時合さえ良ければ魚は意外と足元まで近づいてくる。前打ちはチヌを釣るために進化した釣り方だが、それだけではなく、外洋に絡んだ堤防から石鯛を狙う人もいるし、愛知では昔からの伝統である延べ竿のメバル釣りの要領でメバルを狙うもよし、筆者のようにキビレやセイゴを数釣りするために干潟に立ち込むマニアックな釣りもありだ。

道具立て

前打ち竿は3.6mから6m前後まであるが、やや沖も狙える事を考えて5.4mを使っている。ヘチ狙いでは扱いにくいが、名古屋周辺でタイトにヘチとなると、貯木場や横須賀埠頭ステージのような限られたポイントになる。4.5mは欲しいところである。これに原始的なタイコリール(筆者は昔ながらのスタイルでリアルにフライのものを流用)、道糸はナイロン2号、ハリスはフロロカーボン1.5号を直結し1ヒロほどとる。

ケミホタルは道糸側にチューブで取り付ける。必要と思うなら竿先にはLEDケミホタルをつける。赤と緑があるが緑はかなり明るいので魚を刺激しにくいと思われる赤がいいだろう。雨の降りそうな日は竿先に糸が絡むのを嫌ってケミホタルはつけない。普通にチューブで装着したら糸絡みになってしまうので、ケミホタルを付けるチューブの両端を斜めにカットして糸が引っかかりにくいようにする。これだけでも結構違う。正直言って、夜の魚のあたりはそれなりにはっきりしているし、街灯や船の明かりなどで竿のシルエットはぼんやり見える程度には明るい場所が多いのでつけなくてもいい。そもそも注意していれば手元に手応えが来るし、最近はどうせある程度飲ませてから合わせるのでつけていない。

ハリは餌によって使い分ける。カメジャコならボケ専用、丸セイゴなど軸が長いものを選び深めに刺す。カメジャコを食い気のある魚の近くにプレゼンテーションできればまず食ってくる。青虫やストロー虫は丸セイゴかチヌ。虫はチョン掛けにしてできるだけ長生きするようにするのと、ゆっくり食わせてから押さえ込みのあたりを待つので魚の口とハリのフトコロのサイズ感があまりにもずれていなければ割となんでもいい気がする。モエビのときは専用の細軸のハリを使いたい。

釣っている感覚はジグヘッドの釣りに近い

ガン玉は港湾部ならB~2B、干潟なら4B、風があれば5Bまで使う。ほぼぶっこみ釣りに近いが積極的にポイントを探り歩く点では違う。送り込むような振込ではなく、竿をフライフィッシングの打ち返しのように、のの字に大きく振り前に飛ばしてやるのと、着底後エサと道糸を安定させるためにそれなりに大きいオモリを使うようにしている。これでもってテンポよく探る。感覚としては軽めのジグヘッドを使ったメバル釣りのボトム狙いと似ている。前打ちリールは魚を寄せる時、ダッシュで送り出すときくらいしか使わない。ロッドワークのみで探る。実質延べ竿の釣りである。それでいて、水中の想像力が物を言うことも同じ。待つべき時、見切るべき時もそうだし、水流を味方につけるテクニックも必要になる。

Uガイド特有の感度の良さ

前打ち竿は一般的なルアーロッドよりも非常に感度がいい。ソリッド穂先の先調子であることが多いが、これが魚に違和感を感じさせずに聞き合わせをしてみたり、エサの水中での状況を伝えたりすることに役立つ。熟練の先輩によると、カニの脚がバタついているのとか、歩いているのがわかるそうだが…。さらにUガイドと言ってステンレスの内径2ミリほどの小さなガイドが竿にピッタリ沿う形で並んでいる。これも感度の良さ、そして風に強いロッドワーク、さらに釣り味の良さに貢献している。なんといっても、この釣り味と繊細さはテレガイドロッドでは味わえない。

リールに頼れないから釣りがうまくなる

魚を掛けたらリールを巻くだけという釣りではない。釣れる魚もヒット即ポンポン引き抜ける魚ばかりではないし、もちろんそんなに一筋縄ではいかないタモ入れサイズを狙うわけで。時には50センチを超えるような魚も当たってくるからその時に2号の道糸と実質ドラグのないリールから引き出されるのをぐっと堪える。できるだけ糸は出さない。ロッドワークと隙を見ての高速リール巻きで魚を弱らせる。竿が長いので結構タメが効く。よっぽど無茶をしない限り高切れすることはないので落ち着いて対処するが、障害物に巻かれてしまうと一発でアウトなので、走らせるにしてもその許容範囲との葛藤を迫られるし、ドラグは自分の左手による人間ディスクブレーキだ。ちなみに45センチ位のセイゴなら難なくリールに頼らずねじ伏せられる。

この素朴にしてシンプルな道具で自分のテクニックで釣り上げることが喜びなのだ。おまけに釣り味も抜群にいい。同じ魚を釣るのでも、より充実感を得られる釣り方だと思う。

釣り場は足元から8メートルほど先の水中までに魚がいればどこでもOK

狙う魚によって場所は当然変わってくるが、竿が届く場所であることが前提。しかし港湾部ならあまり困ることはないだろう。埠頭なら、それなりに水深と流れがある場所の方がいい。あとはゴロタ場、テトラポットの周りなどがポイントになる。障害物が多く、足場の狭い場所も多いので釣れた場合どう自分が立ち回るかを考えながら釣りをしたい。決して無理をしないこと。転ぶと大怪我だ。

クロダイからキビレ、セイゴ、根魚をメインに、餌によってはアナゴなんかも釣れる。キジハタの濃い地域なら手軽に釣れるので積極的に狙いたい。

ヘッドライトは後ろを向いて

魚は急な明かりの変化に驚いてしまうし、夜でも水中の様子やエサの場所をピンポイントで認識する程度には人間より視界がはっきりしている。ヘッドライトで水面を照らすなとは昔からよく言うが、これは守ったほうがいいだろう。ただ、常連の爺さんたちの言うほどは長い時間影響しないと思われる。もし一切の明かりが駄目なら、道糸の先端部にLEDケミホタル(これを持って歩けば足元が明るいと思う程度には明るい)を装着して釣っても全く釣れないはず。たしかに明るすぎるかと思ってもそれなりに魚は釣れている。だから移動するときなどは足場が不安定で危険な場所も多いから必ず足元を十分明るくてらした方がいい。ただ、仕掛けの調整や餌をつける時は後ろを向いてやったほうがいい。おそらく魚から顔が丸見えだからだ。

前打ちの仕掛けはシンプルゆえ魚にプレッシャーを与えにくい

ハリ、ハリス、ガン玉、以上。これ以上なくシンプルな仕掛けなので魚に与える違和感が最小限となる。繰り返して打ち込んでも投げ釣りやルアーほど魚にプレッシャーを与えないと思われる。また、エサも自然に漂うのと、魚の反応が伝わりやすいメリットも有る。もちろん、エサが不自然に動かないように道糸の扱いは丁寧に。こういうのは渓流釣りやフライフィッシングの経験がある人が強い。

繰り返しの打ち込みでも低プレッシャーなので、自信をもってポイントをあちらこちらから攻めることができる。投げ釣りやルアーの場合はどうしても着水音や波動が魚を悪い方に刺激してしまうケースが有る。ちゃんと扱えているという前提であればルアーは最初の一投が一番ヒットしやすいというのは経験的にも間違いないのではないかと思う。

いわゆる前打ちよりもっと気楽に手堅い釣りを自由に

この釣り方はもともとクロダイを専門に狙う人たちの間で生み出された強力な釣り方である。しかし、魚の習性としてクロダイ以外にも色んな魚がこれによく反応する。ましてや、食べて美味しいのはセイゴやメバルにカサゴ、伊勢湾側ならタケノコメバル、日本海ならキジハタが入ってくる。一本の竿とシンプルな道具で一匹の魚を極限まで楽しむこのスタイルは気楽であり、奥深い。エサ代や道具代のコストも安い。今のところ自分の中で圧倒的にコスパの良い釣りである。やってみれば、こんなにシンプルな方法で大きな魚が釣れるのかと驚くはずだ。

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