清水港。チヌの魚影がすこぶる濃く、冬でもかなり高い確率でアタリを出すチャンスがあるものの、数を釣るには高度なテクニックが必要といわれるかかり釣りの名所。そしてカセの曳船方式にオカラダンゴという独特のシステム。知らないことだらけで、距離もあるので一人でいきなり行くのは…という感じで様子を見ていたのだが、ASRA MAXとXtreme IKADAの新製品テスト釣行の撮影という機会があり、その取材の傍ら初めての清水港を満喫させていただく機会があったので、釣行を振り返ってみたい。
出船前、ニシダさんが
「今日一日でずっとうまくなるで」
とニヤリ。果たして!?
<謝辞>本釣行では直接一日撮影、ご指導いただいたニシダテツヤさんと黒河アドバイザー、もろもろの準備や資材の提供をいただきましたトシミツさんに大変お世話になりました。ありがとうございます。
富士の高嶺に雪は降りつつ
こうやって冬の富士山をゆっくり見たのは初めてかもしれない。新幹線に乗ってもE席で弁当を満喫するおばちゃんの人型で9割がた型抜きされた富士山を一瞬見れるかどうか、みたいな感じでしか見る機会がなかった。美しい。マジジャパンの心(ハート)だよね。
船宿の黒板に名前と必要な餌やコマセ、弁当のオーダーを書き込むというシステムは初見だと気づかない。なるほど、こういうもんなんだなあというのを見学できるこのポジションは気楽といえば気楽である。
桟橋に係留されているカセに荷物を積み込んでいくが、因幡の白兎よろしく揺れるカセをまたいでいっては荷物を置き、というのを3往復位するので、ダイエットしててよかったなあと心底思った。
今回は久々にニシダテツヤ先生の実釣に密着、という任務も帯びている。序盤は撮影の方にウェイトを置きながら…きっといいシーンしっかり出してもらえると思い、その後徐々に自分も釣りに集中させてもらおうなどともくろむ。

NSR式オカラダンゴの取り扱い
現地購入のオカラと砂利をベースにいくつかの混ぜ物があるが、これは動画で確認していただくとして、その取扱いはいわゆるNSDとは違う。やや水気でペタッとした感じに仕上げ、締めこむというよりはまとめていく、という感じで握る。水気が足りないと中層で分解するし、多すぎても修正が効かなくなるので、最初は少しパサつき気味(それでもNSDよりしっとり目に)に作っておいて適宜手水で調整していくのが安心だと思う。
ASRA MAX 160 F2とXtreme IKADA 1.2号とシラサエビで繊細に攻める
タックル編で述べてきているのでここでは省略するが、ここのところずっとこのタックルでの釣りを続けてきたため、いよいよ本域の出番だ、という感じだ。わずかな反応を引き出すためのラインテンションコントロール、エビの姿勢、ハリの角度を意識するかの如く細かく、丁寧にヒットゾーンを探る技術が求められるがゆえに面白い釣りになるという。
そんなシチュエーションにはこの組み合わせが最適というわけだ。
エサ取りは良型グレとアジ、そしてフグ
いつものように落とし込みから探ってみるが、フグ、グレが釣れてくる。アジは昼から徐々に増えてきた印象だった。
すぐにダンゴ釣りに切り替えるが、最初はうまくダンゴが握れなくてグレが連発する。とはいえ、グレはグレで30センチ前後のものも釣れるし楽しい。食味も絶品だったが、グレがあまり釣れるということはサシエが浮きすぎていたり、ダンゴがもたなさすぎたり、というチヌから遠ざかる要素を作っている可能性を考慮すべきなので注意したい。

ダンゴアタリは早く出るが、ボラの気配も濃厚
ダンゴをぐいぐいと押すような反応だったり、糸ずれだったり、ボラっぽいなあという反応が続く。ぴょこんとサシエを抜くのではなく、つつかせている間に自然に抜けているようなテンションからスタートして間を持たせることが大事だという。
いろいろ探っている間にニシダさんは根がかりに苦しみながらもチヌを釣り上げていく。潮の流れや風向きの条件が根がかりを回避しやすくしたタイミングを逃さない、という感じだ。ニシダさんが3枚ほど釣り上げた後、こちらもカメラを固定し、釣りに集中。しばらくグレを連発させた後ダンゴのタッチを修正するなどし、ほんの気持ちほど穂先を抑える重みを捉えてようやく本命のチヌを釣り上げた。

なるほど、この繊細さはたまらない楽しさがあるし、NSR式&F2with1.2号とめちゃくちゃ相性がいい。ぜひ清水港ファンの皆様もASRA MAX 160F2とXtreme IKADA #1.2をお試しいただきたいと思います。
風は強くなるものの、背に受けるポジションなのでそれほど苦にせず
11時ごろ、昼食の出前が届く。

レジェンド二人が揃って勧める焼肉丼である。
確かに、普段名古屋式の味付けに慣れた自分から見るとちょっと新鮮に感じる、さっぱりとしつつ甘い、優しい味付けの焼肉丼はおいしかった。ここに来ないと食べられない味、というのが増えるのは楽しい!敷き詰められた玉ねぎのシャキシャキした触感もまたいいアクセントで、あっという間に平らげてしまった。
昼から風がいよいよ強くなってきたが、それほど釣りに支障が出るほどではなく、追い風なのでまだよかったが、潮まで前に払っていく時間帯があり、その時は少し苦労した。

「やりとり、うまくなったなあ」
「でも、ちょっとロッド立てすぎてるわ」
言われたそばからバラシ。ラインブレイクではないが、クッションが利かずショックで外れた、という感じだった。立てすぎてもロッドのおいしいところを使えないということを踏まえて立てすぎず寝かせすぎず、程よく角度を保持する意識をもってリトライ。リトライさせてもらえるくらいアタリが多いということなんです。素晴らしいぞ、清水港。

やがて無事2枚目のチヌをゲット。
珍事 愛の共同作業
ほぼ同時にヒット。その差1秒。
「ダブルヒットやな~」
「ですね~、いいですね」
しばらくやり取りするがロッドワークが二人でピッタリシンクロする…。
「あれ?なんでここまで一緒になるんですかね?もしかして」
巻き上げていくと現れる朱色の魚体。
「アコウか!でっか!!」
「うっわ!両方食ってる!写真撮りましょ、写真!」
「指入れたら危ないで」
「いい写真のためなら少々の傷はどうってことないですw」

まるで自分が釣ったかのようなツラで写真を撮っていただきましたw
そういえば3年前の遠征で隣で釣りさせてもらったときもコロダイとかおいしい魚たくさん釣れたなあ…いいジンクスになるといいな…。
この一幕の後、定点撮影のメモリーカードがいっぱいになり撮影終了。撮れ高も十分だと喜びつつ、残りの時間、あとちょっとでアタリが出る、いや、これがアタリかな?みたいな微妙さを楽しむ釣りを続け、ラスト一投で3枚目のチヌを掛けて納竿。残念ながらこのシーンは撮れていないが、仕方ない。
バラシもいくつかあったので、本来5枚ほど釣れててほしい感じだった。

清水港の釣り方を一から学ぶ上でこれ以上ないレクチャーを受けられるというぜいたくな一日で、ちょうど2月末にはCMAXの大会もあるのでこれ以上ない演習になった。全く未経験の釣り場でいきなりというのは、ルール上同乗の二人の釣果の合計で競うことを考えるとちょっと厳しいものがある。この日の経験を生かして、当日もいい釣りができるようにしたい。