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チヌの魅力

ここしばらくは専らチヌ狙いの釣行を重ねてきたが、もともと私はチヌを釣るのが下手である。下手で、なかなか釣れなかったからこそ、ある程度釣れるようになったことで釣り人生が一気に鮮やかになったくらいだ。魚体は黒いけど、黒い中にあるその奥深さこそが鮮やかなのであり、これは水墨画とか江戸時代の四十八茶百鼠に通ずる味わいなのだ。

「何狙いですか?」

「チヌです」

こう答える人は心の奥底で、俺はチヌと向き合えるほど釣りに熟練しているんだ、と自信を持っているに違いない(偏見)。たいてい、チヌ釣り師といえば、一目置かれるものではないだろうか(妄想)。しかし私はなかなかこのセリフが言えなかった 。

「いやあー、何でも釣れればって」

しかし今は堂々と言える。釣れなくても、言う。

狙いはチヌです (オタク特有の早口)(クチャクチャ)(ワークマンの小銭入れ)(ワークマンのウインドブレーカー)(ワークマンのサロペット)(イシグロでカラマン棒大人買い)(モンスターエナジー)(イシグロPBのウキケース)(コマセが風で返ってきてベタベタのグラサン)(ウキロストでマジ泣き)(ワキガ) (イシグロのスパイクブーツ)(豚足)(食わせ鉛で差をつけろ) 」

私は「銀鱗」という言葉は、チヌ化あるいはフナのためにあると思っている。いかにも魚らしい魚であり、釣り味が良く、一筋縄では行かない奥深さを持つこれらの釣魚はこれからもずっと人間と知恵比べをしていくのだろう。

ちなみに、チヌは食味はあたりはずれがあるものだが、釣りをしない人にクロダイを釣っているというと美味しそうだとか食べたいだとかよく言われる。実は扱いの難しい魚ゆえ、一般的に魚屋でも安価で売られているし、魚屋的にはあまりメジャーな魚ではない。民宿などで出されるチヌの旨さは格別だが、釣りで仕留めたチヌについては体臭、食ってる餌、水質を考慮して慎重に判断したい。しかし我々は食べるためだけにチヌを釣っているのではない!

身近な大物、神出鬼没で気まぐれな性格のようでいて案外大胆、一旦かかれば力強く特徴的な釣り味、そして得も言われぬ迫力と美しさの共存したガンメタリックの幅広い体躯に刀を彷彿とさせるような棘。野武士と形容されるのもうなずける。

その昔、敦賀で釣ったチンタのかっこよさに惚れる

中学生の頃親に連れて行ってもらった敦賀のキャンプ場。今は廃材置き場になってしまったが、そのキャンプ場から道路の下のトンネルをくぐった先に小さな桟橋があり、そこからのウキ釣りでアジや木っ端グレ、チンタが面白いように釣れた。今ではベラとスズメダイの猛ラッシュでそうはいかないだろう。。。炭火で焼いた塩焼きは今でも忘れられない。いや、まあ、そこそこ、まあまあのうまさだったけど。

ともかく、そのときに釣った銀鱗に惚れ惚れし、おとなになって自分で釣りに行けるようになったら是非チヌを釣りたいと思った。というのも、私は岐阜県の内陸部に住んでおり、海は遠い場所だったからだ。

日間賀島で見える居チヌの群れにビビる

大人になってから、仕事で日間賀島にいったときに見たチヌの群れに驚いた。こんなのがうようよいるのか!日間賀島のチヌ釣りはもっぱら落とし込みと言ってもいいだろう。またこれもチャレンジしてみたいと思い、とりあえず持っていたルアーロッドでカラス貝を落とし込んでいくと、竿が満月に曲がる引き味。どうにか釣り上げた魚は45センチ位はあろうかというアイゴだった。

チヌが釣れない

管理釣り場でもニジマスなら並以上には釣れる。そして渓流にもでかけてイワナも釣れる。ルアーでメバルやシーバスもそこそこ釣れた。でもチヌだけは釣れない。いや、本気で狙っていなかったからだ。逃げていたのだ。本当は。チヌとの知恵比べ、根性比べから、逃げていたのだ。そうしている間に読む書籍やネットでどんどん頭でっかちになっていく。どれだけ難しい魚なんだろう。でも真冬にルアーで釣れていたりもする。浜名湖ではポッパーなんぞで普通に狙えるという。なんちゅー気まぐれなやつだろうか。

色々ググっていると「チヌ釣りこうすれば・・・」とかいう情報商材がやたら出てくるようになったのもこの頃である。

ボートからルアーで仕留める

そのころ仕事でご縁があった方の所有する釣り船に同伴させて頂ける機会があり、しばしばそのオーナーよりたくさん釣ってしまい白い目で見られたものだが、そのときはホッグ系ワームの落とし込みとか、ミノーのトゥイッチングでいいサイズのチヌを仕留めている。この経験から、チヌはその気にさえなればルアーも追うことはよく理解している。ちなみに、調子に乗っていると竿頭になったらカンパ金が少し多くなるというルールが作られた。

90ミリミノーにあたってきた

ようやく立派なチヌが釣れた。しかし、それも沖合の手つかずに近いポイントでの話である。こういうポイントのチヌは実におおらかで、2号ハリスでカニを落とし込んでも一気にひったくっていくような奴らである。それだけ釣り人のプレッシャーが低く、魚影が濃いということだ。これでうまくなったつもりになってはいけない。

前打ち釣法にトライする

色々考えると名古屋界隈では落とし込み、前打ちが最も理にかなった釣りである、ということになり、とりあえずの道具を揃え、貯木場に出かけることにした。桟橋の真下であたるというので、竿は筏竿だった。餌はカメジャコ。その初トライで、コツコツ、ギュッというお手本のようなあたりが出た。

当時のとよく似たタイプの個体。いかにも居付きで痩せた不味そうなチヌだ。

ビギナーズラックである。47センチのチヌを引きずり出したのだった。なお、味は最悪だった。その後も何度もいろんなポイントに出かけるが、パイルに巻かれたり、やり取りが下手でバラしたりで苦渋のトライが続く。

ふむふむ、ダンゴ釣りで寄せて釣ると良さげだな

紀州釣りがどうやら良さげだという話があったが、名古屋港で紀州釣りをやっている人をまだ見たことがなかった。そういえば、浜名湖の海釣り公園でかかり釣りの要領でダンゴ釣りをしているおっさんを見たことがある。あれなら釣れるのではないか。そう思いたち、とりあえずダンゴエサと混ぜものを用意してでかけてみたが坊主。めげずにもう一度でかけたのだが、駄目。見かねた隣のおっさんがダンゴの作り方を教えてくれた。彼こそが例の師匠である。その日、足裏サイズのグレをダンゴ釣りで二桁ほど釣り上げるという無双状態で、後光が差して見えたものだ。

そんな師匠の教えのかいあって、3回目以降のダンゴ釣りでは逆転してこちらに軍配が上がりつづけている…(イエーイ師匠見てるー?)

その後も通い、春から初夏のグレ狙いから夏から落ちの時期までのチヌ狙いまで通して、まずは浜名湖でのかかり釣りスタイルのダンゴ釣りの自分なりのパターンを確立した。しかし冬になるとこれでは釣れない。師匠がウキフカセなら釣れるぞというのででかけたがうまくあたりが拾えず敗北。「いつでもおいで、ハッハッハ」と勝ち誇る師匠。悔しいので2019年は名古屋港で練習することにして2018年を終えた。

2019年はドブサナギ釣法の開発

名古屋港でのウキフカセ釣りに勤しんだ一年だった。2018年の秋シーズンでもウキフカセでオキアミを使ってチヌを釣っていたが、2019年はオキアミに加えてサナギを使っての這わせ釣りでたくさんのチヌに出会えた。

このくらいのサイズが大体3回くらいあたる

どっしりしたウキでしっかり這わせる釣りから、ゼロ号ウキでのフォーリングの釣りまで色々試してきたが、いずれにしてもサナギで確実にチヌを食わせられる。マルキユーの激荒はなくてはならないパートナーとなった。

私は茶濁りの汚い9号地の海でのサナギ釣法を自嘲でドブサナギ釣法と呼んでいるが、自分の他に積極的にサナギ餌を使って釣りをしている人をまだ9号地界隈では見かけない。そもそもウキフカセやっている人自体があまり多くない。なので、まだまだ研究の余地しかない。

かくしてある程度チヌが釣れるようになった

おかげさまで、あれだけ悩んでいた「チヌは難しい」問題はある程度解決した。昔2chの釣り板で「チヌは一匹釣れたらそれまで何で釣れなかったんだってくらい釣れるようになる」と誰かが書き込んだのを読んだことがあるが、ほんとそれな、という感じはある。名人のように二桁!とはいかないが、仕事帰りの3時間の釣りでも1~2枚はチヌの顔を拝めるようになった。2014年頃の自分に言ってやりたい。「お前は2019年になっても独身だけどチヌは狙って釣れるようになるぞ」と。

で、思い返してみたら、チヌ釣りというのは釣りの基本に忠実に、そしてどっしり構えて釣っていけばいい、慌ては禁物、ということがわかってきた。反応がなくても基本をしっかり守り、じっくり釣れるまでブレずに取り組めばきっと結果が出る。かと言って無策でもいけない。あくまでもベースの考え方からブレずに細かい部分の修正を行ってアジャストしていくものだ。なんか、大人の釣りだよなあ。

やりとりも慌てず、かと言って弱気にならず、どっしり構えて落ち着いて竿さばきすればよい。強引にならず、ためつつ、動きをよく見て巻けるときに巻く。よくしなるチヌ竿に笑顔になりながらタタキを楽しむほどの余裕が出てくれば、大人のチヌ釣り師だが、まだまだその境地には至れていない。。。

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