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ウキの感度・ウキの浮力という言葉の印象に騙されるな 第2回

前回記事の続きである。まだお読みでない方はそちらもどうぞ。
https://gyottosai.com/2020/02/03/ukinokatachi01/

感度=ウキの浮力という関係ではないことを確認する

前項ではウキの形状、引き抵抗、引張方向の断面積がウキの感度を決めると書いた。では、浮力の小さいウキは感度が良いという俗説?について見解を述べたい。はっきり言ってこれは誤りである。浮力の高いウキは感度が悪いというのも誤りである。水流がない環境であれば オモリ負荷Bの円錐ウキよりもオモリ負荷5Bの立ちウキのほうが感度が良いといってもいいんじゃないかとすら思う。
(参考:軽い←B・2B・3B・4B・5B・1…→重い)

浮力の大きいウキを使うとそれだけ大きなオモリを使うことになる。仮に水流のない釣り場だったら、ほぼ垂直にハリスが立つため、底を切っていればウキの形状に左右されこそすれ、同じ形状なら適切なオモリを背負ったウキの大小はさほど影響がないと考えている。ウキの浮力はすでにオモリによって殺されているからだ。ここ重要ね。

夏のコッパグレともなればバビューンとウキをひったくるので感度もクソもないけどね

その上で、私は可能な限りウキは小さくしたほうが良いという考えには同意である。あれ?と思うかもしれないが、その理由は「ウキの浮力が弱い(≒オモリ負荷が小さい)と感度が高い」からではなく、
まずは
オモリが小さい方がウキの断面積を小さくできるので感度の犠牲が最小限になる
のと、
「アタリが出せる限りはオモリがウキとハリの間を屈曲させないほうが良い」
「魚がくわえたハリの移動をウキに伝達するまでの障害は少ないほうが食いの点でもあたりの表現でもメリットが大きい」
からである。

オモリが重くなればなるほど、魚がハリを咥えて反転してもオモリが抵抗になり、ウキまでそのエネルギーが伝わりにくくなる。オモリ自体を動かすのにエネルギーを消費するし、たいてい水流によって大きいオモリを支点に仕掛け全体が「く」の字に曲がってウキからハリまでの間に屈曲ができるから、それが伸びるまでロスが出る。オモリが重いとそれだけ魚も違和感を感じやすい。また、居食いなどの薄いリアクションのアタリ方では中通しであってもウキまでその様子がやや伝わりにくくなる。

ウキの感度の問題ではなく、オモリとハリスの問題である

ここまで読んで気づいた人もいると思うが、オモリ負荷の小さい(=浮力の小さいウキ)は感度が高いというのは、ウキの能力の問題ではなく、「オモリの重さの問題」である。オモリが重いということは大きいということでもある。これがよろしくない。そこで、ウキフカセの熟練者はハリスの屈曲を嫌ってわざと小さいガン玉を分散してつけることでハリスを極力まっすぐ保てるようにすることがある。あるいは、通常からそうしている人もいる。

とにかく、オモリは状況さえ許せば極力軽いに越したことはない。そのほうが、よりコンパクトでスリムなウキを使うことができるのだ。スリムなウキというのはそれだけ良くアタリを表現できるという意味で感度が良いというのは前に書いた。

しかし、それですべてが解決するわけではない。実際の海は潮が流れている。そしてある程度流れていないと魚の活性は上がらない。さらに風や川の流れなどによって二枚潮もおこる。それで軽すぎる仕掛けだとハリがいつまでも浮ついてなじまないことがある。オモリがしっかりウキと引っ張り合うようにならないのだ。感度重視と言って必要以上に軽い仕掛けを作るとこのようなことになり、タナにハリが届いていると勘違いしたまま釣れない時間がすぎることになる。

また、立ちウキの場合、仕掛けがなじまないとウキは立たないし、自立立ちウキになるとウキは立つけど仕掛けはなじまないままなので余計に状況がわからなくなる。

へらぶな釣りにおいても、ウキが小さすぎると釣りにくいという現象はある。

風・流れなどで仕掛けがなじまない場合はオモリが必要なので、感度を犠牲にして大きいオモリ・ウキにしていく

また、風がある日もそうだ。風があると道糸が引っ張られ、仕掛けが浮き上がりやすい。その分オモリをもっと背負わせたいし、ウキの形状もよりどっしりとしたもので感度よりも風や表層の流れに対する引っ張り抵抗を付けて臨む。その分小さなアタリはわかりにくくなるかもしれないが、それよりエサが魚のいる場所まで適切に運べているかどうかのほうが優先順位が高い。

風が強い場合は感度を犠牲にして重いオモリ、どっしりした潮乗りの良い円錐ウキを使う。しかし風が弱く二枚潮なら、自立立ちウキでオモリ負荷を上げても、もともとの感度の良さをあまり殺さずにタナを狙うことができる。なぜならスリムだからだ。活性が低い冬場で風がないならぜひ採用したい。

あくまでウキの形状が引き抵抗に対してスムーズかそうでないかで感度が決まるのであって、可能な範囲で軽い仕掛けのほうが食いがいいというのは魚がオモリを嫌がるかどうか、魚からの反応がウキに伝わりやすいかどうか(途中でオモリやサルカンなどがウキへ伝達するにあたっての抵抗になる)という別の要素が絡むのである。魚から見た食いやすさと釣り人視点のウキの感度の問題を混同しないように注意したい。

感度が良いことの弱点

スリムな形状であるために立ちウキがより大きくアタリを表現するということはすでに書いた。しかし、その反面風が強い日やエサ取りの多いときは立ちウキが使いにくい。動きすぎるからだ。慣れないうちはどうでもいい反応を大げさにとってしまうというデメリットもある。それなりのサイズの魚ともなれば、思ったよりハッキリとウキを動かすものだ。1号の立ちウキが消し込んで合わせてみると金魚サイズのメバルだった、というのは前の記事でも登場したがもう一度貼っておこう。

ちなみにへらぶな釣りではもっと微妙な差で、ヘラウキのボディの太さが数ミリ違えば適した釣り方も違うし、トップの太さや素材でアタリのストロークは大きく変わる。冬場の底釣りは無垢トップといって、極細のトップが用いられるし、春夏の浅い棚の釣りではよりダンゴを大きく背負えて明確なあたりだけとるためにトップはそれ自体に浮力のある、パイプの太いものになる。したがって、ストロークの大きいトップとストロークの小さいトップでは目盛りとして刻まれた黒線のピッチも一般的に異なる。これらの特性を釣り方によって吟味し、ウキを選択するからヘラ師のウキケースの中はウキまみれなのである。

たぶんやってない人から見たら、全部一緒に見えるくらいの微妙な違いだけどね!

浮力と感度は関係ない!感度に関係あるのはウキの形状と断面積だ!

オモリが足りなくて残存浮力が高すぎるというのは論外として、ウキの浮力と感度は全く別の要素であるということはもう一度確認しておきたい。ウキが引っ張られるときの抵抗が大きいか小さいかが感度の大小だ。例えば、玉ウキや円錐ウキの底面が平面だったら、めちゃくちゃ感度が下がる。あれは下部を絞った形にするか、どっしりした形にするかで感度を優先するか、感度を犠牲にしてでも安定感を重視するかの思想の違いである。

そして、浮力の高いウキは浮力が高いから感度が悪いのではなく、大型化することで断面積や引っ張られる際に抵抗となる表面積が増大し、その結果として感度が落ちるのである。その浮遊体を引っ張り込む際にウキの表面にかかる水圧が感度を殺すのである。繰り返しになるが、同じオモリ負荷の円錐ウキと自立立ちウキなら後者のほうが圧倒的に大きい=浮力が高いけど感度はより高い。

これが「ウキの浮力が小さい方が感度が高い」と勘違いしてしまうからくりである。

「浮力の小さいウキは感度がいい」と刷り込まれてしまうと、正しい仕掛けのセッティングにたどり着けなくなるのでくれぐれも注意したい。

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