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ヘラブナ釣り業界の危惧:人口減少について

ヘラブナ釣り雑誌を読んでいると、しばしば、このジャンルの人口減少、高齢化が問題提起されている。実際、若い釣り人でヘラブナを釣ったことがある人は少ない。相当に少ない。シーバスロッドをもっている30人に聞いて1人もいないだろう。もちろんシーバスもテクニカルで面白い釣りなのだが、魚を釣る「プロセス」を組み立てていく理論派にお勧めしたいのがヘラブナ釣りだ。

ヘラブナのここが面白い

0.4号のハリスで30センチを超えるヘラブナの強烈なファイトを述べ竿で耐える。正直、同サイズ、同重量のブラックバスよりパワーもスタミナもあり釣り味がよいと思う。野池の40センチともなれば最初のダッシュは強烈だ。うっかりしていると竿ごと持っていかれてしまう。へたくそだとのされてハリス切れだ。

冬はひたすら辛抱しながら一枚一枚を丁寧に釣り込み、春秋はその日のシチュエーションを探りながらいろいろな釣りを試し、夏は豪快に消し込むウキに歓喜する。年間を通して戦略性が高いのはほかの釣りと同じだが、同じ魚を釣るにしても、微妙に道具立ても違うし、餌も違う。テクニックも千差万別だし、時代ごとのはやりすたりもある。そのためか腕に差が出ることが否応なくはっきりしており、上達した分、わかりやすくしっかり結果がついてくる。研究熱心で行動力のある人ほど良く釣れるが、その傾向が顕著だ。

業界の心配:若い人がいない

その原因はいろいろ言われている。道具がダサいとか、釣り場が少ないとか、入門するにしても道具がいろいろ必要で敷居が高いとか。確かにそれぞれの理由は要素として成立する説得力がある。とくに、道具をいっぺんにそろえていないと恥ずかしいと思われるとかそういう不自由なイメージもついて回る(そんなの管理池の道楽連中だけで、普通の人は海釣りのロッドケースを流用しようが、メイホーのプラケースに道具をしまってようが気にしないし、野釣りではいわゆるヘラ用のバッグじゃなくてルアー向けのものとか各自で工夫したものを使ったほうが便利だったりする)。

道具の敷居が高い

実際私もウェーダーをしまうときに使いそうな大型の防水トートバッグに餌をしまい、蓋つきバッカンに道具類を格納している。それであれこれ言われたことはない。野釣りなら餌も絞り込んでバッカンに詰め込んで持ち運ぶし、実際そのくらいの大きさのほうが移動が楽だ。

ちょっと話がそれた。そうやって、自分のスタイルで入っていき、必要なら道具を買いそろえていけばいいと思うのだ。プラケースよりも専用納期入れじゃないと破損が心配とか、そういうことでいいと思うのだ。だから気にしないでいいと思う。そもそも専用のバッグ類、高すぎませんかね。続けるかどうかわかんない釣りにいきなりトータル8万円くらいかかりますって言われてもしょうがない。まずはシーバスと同じくらいの予算でエントリーできなきゃ話にならんと思う。

道具がダサい説

もう一つ、道具類、ウェア類がダサいという話だが、実際時代感覚が70年代で止まっているものもあれば、若い人受けを狙った斬新なものも出てきてはいる。出てきてはいるが、どうも、ヤンキー臭いのである。小学生の運動靴がサイバーかっちょえー!なデザインであることの延長であり、アルファードのエンジングリルがごつくてクロムメッキでギラギラしててつり目で。。。というあれをかっこいいと思う感覚に近い。それはそれで一つの文化ではある。筆者は大昔釣り具メーカーに勤めて商品開発に携わったことがあったが、そういうマイルドヤンキー路線&オヤジがゴルフ道具とか自動車に求めるぎらついたデザインこそが王道と信じられている。

じゃあ、ルアーメーカーのようなストリート系のカジュアル感を出せばいいのか、というと、そうでもない気がする。あくまでもジャパニーズ伝統スタイルのカッコよさでいくのか、全く別の、ヤンキー文化、オヤジ文化から切り離したデザインの世界観を打ち出さなければならないだろう。

その点で素晴らしいアプローチをしていると感じるのが、一景(IKKEI)という新興の餌ブランドである。まずはウェブサイトを見ていただきたい。
http://ikkei-jpn.jp/

これが私が言うところのジャパニーズ伝統スタイルのデザイン感。美しいじゃないですか。若い人だから日本の美意識がないということは決してないはず。自然に触れ合うよりもっと先の、自然の一部であることを再確認するために釣りを楽しんでいるような人には、やはり日本古来の雰囲気が残る世界観がよい。ダイワあたりも数年前のブランディング一新に伴って道具類のデザインが洗練されてきた。スノーピークブランドも相変わらず素敵なデザインを供給しているが、もっと評価されてもよいのではないか。もうスノーピークで道具一式全部パッケージでヘラブナニュースタイルを提案するくらいのことしちゃっても楽しいと思う。日本のモノづくりのいいところがちゃんと伝わってくるし。

しかし最大の問題はこれらの要素ではないと筆者は考えるのである。

最大の原因:池を占領する老害による圧力

反論などあるかもしれないが、筆者が実際に各地の池を回ったりしてきた経験でそう感じるので仕方ない。実際にヘラブナ釣りに魅力を感じても、場所によっては非常に民度の低い連中が我が物顔で占拠していることがある。例えば名古屋市内には市民が自由に釣りができるように作った池がいくつもあるが、そこを常連が場所をしっかり押さえていたり、うっかりそこに入っているとどけと言われたり、そういうことが実際にあるのだ。確かに、ヘラブナの放流をしているのは有志かもしれないが、あくまでも市民の池である。こちらがおじゃまします、という感覚で入っても関係なく、プレッシャーをかけてくるような手合いがいる。それは私が若いからというのもあるかもしれないが、定年過ぎてヘラブナ釣りを始めたような人も、同じような面倒に巻き込まれてあそこの池は嫌いになった、というような話を散々聞いてきた。こんなことでは新しく入ってきた人もすぐにいなくなってしまう。

そのような状況が何年も続いた結果、世代の断絶が起こっていると思うのは筆者だけだろうか。

管理釣り場でも各地からゲストがよく来るような人の出入りが多いところはそのようなトラブルは起こりにくいが、小さいところではどうしても常連同士のいさかいや派閥争いのようなことが起こってしまうのだ。実際、私も嫌な思いをしたことがある。それでしばらく通っていた釣り堀をやめてしまった。今ではほとんど名古屋周辺の市民池か、野池である。野池はいいぞ。

ストレス解消に来てストレスをためるのおかしくないすか

そもそも派閥のような何かとか、常連がどうのこうのとか、大会で嫌いな奴がどうこうとか、そういうくだらないマウンティングをいつまでもやってるからニューカマーが増えないのではないか?実生活でもそんな醜い争いに巻き込まれるのはごめんだが、なぜ余暇でもそのようなストレスにさらされなければならないのだろうか。

つまり、せっかく興味を持って入門しても、その先にもまた地獄があるのだ。釣りとは関係ないところで。それをはたから見ていて、楽しそうと思えるだろうか。上達志向が強ければなおのこと、そのような人間関係に放り込まれて面倒な思いをする。ぶっちゃけて言えば、いくらメーカーや団体が努力しても、その努力や支払ったコストはその先の環境によって水の泡になる。ある程度仲間がいたほうが上達するし、釣りを続けるモチベーションにもなるが、現状では運の勝負で、自由気ままに楽しむことが難しいのだ。ある意味私のように、釣り場で会えばよくしゃべるけどなれ合うほどでない距離感で孤独にやるしかないw

たとえば関東や関西など盛んな地域では若い人のコミュニティも充実しているかもしれないが、地方ではそうもいかない。まあ、年齢に関係なく、いい釣り友はいい釣り友であり、技術の伝承も必要だと思うし、そういうところは積極的にSNSなどを駆使してロビー活動にもいそしんでいただければと願うばかりだ。

私はヘラブナ釣りが好きだ。あんなに考えさせてくれる釣りはない

ヘラブナ釣りの魅力を知人に話したところ、「人生とか仕事に似てるね」と、これまた深い深いリアクション。そう、そうなんだ。ずっと同じ場所で魚と向き合うそのプロセスは、考える時間をたっぷり与えてくれる。ちょっとしたポイントがずれれば全くつれ方は変わってしまうし、自分のミスに気付かなかったり、気づいていても面倒がっていてはどんどんつれなくなり、一日の結果に大きな差がつく。先を読み、準備し、手を抜かず、工夫する。パターンが出来上がったらしっかり釣りこんで最大限の成果を生み出す。たぶん、ヘラブナ釣りのうまい人は、仕事もうまい。だから私もうまくなりたい。

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